ベン・バーナンキ『リフレが正しい。』(高橋洋一監訳・解説、坂元信介、赤井誠ら協力)

 現在の日本はアベノミクスの核心部分は、リフレーション政策(リフレ政策)であり、それはデフレを脱却し低インフレ状態にもっていくことで経済を活性化させるものだ。このリフレーション政策を10数年前から日本に適用すべきだと主張していたのが、現在のFRB議長ベン・バーナンキである。そのバーナンキFRB議長時代の講演を、適切な訳者たちと監訳者&解説者を得て、日本語で読める幸運をまずは感謝したい。

 高橋さんの解説でも批判されているが、バーナンキインフレ目標やリフレ政策、あるいは中央銀行の独立性に言及するたびに、日本のメディアや日本銀行はその真意をねじまげるような誤訳や意訳を垂れ流し、日本の世論をミスリードしてきた。本書の翻訳にかかわった面々はその点に何年もの厳しい視線を投じてきた人たちだ。もちろん翻訳のプロではないが、しかし誠実にまた的確にバーナンキの発言が日本語に移され、なおかつその真意と経済的文脈を高橋さんのレベルのきわめて高い発言がフォローしていく。

 前記したように、いまリフレ政策を実行している日本にとって本書は座右において何度も目を通すべきものだろう。そして繰り返すが、いまの日本のメディア(大新聞やテレビ)、そして官僚たちの意図的ともいえる海外の情報「操作」に負けずに、いわば草の根でがんばってきた人たちの存在をこれからも忘れないでほしい。

 いい本、いい仕事である。