この問題の大枠は、細部はまだ詰める余地があるのですが、日本銀行が自分のミッションを物価安定として、これに対応して自らは現状での金融引締めスタンス(理論的には未来永劫のマネタリーベース一定)が望ましいと考えているならば、民主党の減税を利用した政府支出の削減と協調した方が、自民党内部や財務省の一部に存在するいわゆる「上げ潮派」を屈服させるには望ましいのではないか、というのが僕の見方でした*1。もちろん大きなところでは、それほど合理的に民主党と日本銀行が行動しているのではない、という見方も可能でしょう。
ところで今朝、bewaadさんのエントリーを拝見して、いろいろ参考になったのですが、ひとつ以前からわからないところがあって、bewaadさんも日銀内部の声という形で紹介されていますが、
:運用上、旧日銀法時代から現行日銀法にそれほど引けをとらない独立性が確保されていたわけですが(詳しくは上川龍之進「経済政策の政治学」をご参照ください)、法形式としては大いに変わり、それがために日銀総裁らは国会へより関わらざるを得ない状況になっています。他方でそのような状況になって以来10年程度、まだまだ組織的に国会対応のノウハウは蓄積されていません。上述の日銀役職員の武藤前副総裁に対する評価は、そうした日銀役職員が苦手とする、しかしながら逃げることが許されない分野において、きちんと結果を出してきたことに部分も少なくありません(「きちんと」というのが、あくまで日銀にとっての評価ではあるにせよ)。:
上川氏の本は不勉強で未読なので近日中に拝読します。以下の疑問への答えも上川氏の本に書かれているかもしれません。
僕が考えたい点は、
1 「国会対応のノウハウ」とは具体的になんなのだろうか、ということがまず第1点
2 次に「国会対応のノウハウ」が定義できたとします(とりあえず定義しないと議論が先にいけないのでいまはblah,blah,blahとしておきます)。このblah,blah,blahを上記引用からは、武藤前副総裁が、日銀に蓄積が不足するので、従来行ってきたために日銀内部から評価されてきたとあります。
しかし僕が見たところ、日銀の公式記録の中にそのような武藤前副総裁の「blah,blah,blah」に該当する行為は見当たるようには思えず、政策や経済状況に関する説明、日銀内の組織上の議事などの副総裁ならば当然に行われるべき活動の数々しか記録にはなさそうです(公式記録をみるかぎり岩田前副総裁とたいして変わらない)。blah,blah,blahはおそらくそれ以外のことでしょうから。そうなると武藤副総裁は非公式活動の中で、blah,blah,blah行為をしていたのではないか、といまは考えています。その僕の考えは正しいのかどうか*2。
3 次に、1の「国会対応のノウハウ」が定義され、2の武藤氏が非公式活動の中で日銀の利害にかなうblah,blah,blah行為をしていた、という前提の上です。もしこの前提でよければ、このような状況が存在するならば、まさに「陰謀」とはこのことではないだろうか、という気もします。
なぜなら「陰謀」は僕ら国民がほとんどわからない状況の下で、当事者たちが利害を分かち合うものだからだと思うからです(なお、blah,blah,blahが定義されないと利害さえも明瞭にはなりません。これも「陰謀」の特徴といえるのではないでしょうか)。実際には「陰謀」が行われている必要もないと思います。問題なのは「陰謀」の余地があることだと思うのです。
新法以後10年なので経験の蓄積がないから、このような「陰謀」でその蓄積の不足分を代替してきたとするならば、この蓄積がいつ充足されるのかよくわかりませんが(この目安の開示も必要でしょう)、少なくとも日銀の役職員が自らの利害に役立ち、それゆえに次期の総裁候補の期待を日銀役職者間に高める行為を、副総裁の職務として非公式に行いうるのならば、これは私見ですが、そのようなblah,blah,blah行為を明瞭にして国民の利害にかなうかどうか(日本銀行の新法のミッションに適合するのかどうか)を考えるべきではないか、と思うのです。