山崎元MAX!!その2(武藤副総裁の不適任と福井総裁スキャンダル)


 本当に最近の山崎さんのコメントには肯くこと多し。このブログでも大論争に発展した村上ファンド関連での福井総裁辞任せよ問題に関連させて、山崎さんは今日配信されたJMMで以下のようなコメントを出している。


:加えて、武藤氏の場合は、福井俊彦総裁が在任中に運用行為(量的緩和解除の前の
村上ファンドの解約を指します)を行った明らかな内規違反に対して、これを正当に
批判し、福井氏の辞任につなげなかった、コンプライアンス法令遵守)能力の欠如
が欠陥として指摘できるでしょう。福井氏は本来辞任すべきだったし、副総裁を筆頭
とする周囲は、彼の辞任を実現する必要があったはずなのですが、武藤氏は福井総裁
を「支えて」しまいました。武藤氏は財務省事務次官でしたが、たとえば、在任中
に部下がインサイダー取引ないしそれに類する不正を行った場合には、当然その部下
を懲戒免職にしたはずです。相手が上司(自分が副総裁で福井氏が総裁)の立場の場
合に、不正を見過ごし、明確な批判のメッセージを発しなかったという意味では、武
藤氏は、日銀総裁としては「胆力不足」かも知れません。:


 ところで民主党の総裁選出引き伸ばし作戦であるが、これは日銀にとってはきわめて有利な戦略になっていることを見逃すべきではない。まず最近も書いたが今般の経済政策の失敗を日銀ではなく政治の側に移転することに成功しやすい環境になったこと。実際には日本経済の脆弱性は日銀の政策の失敗以外の何者でもないのだが、今後、政争が長期化すればするほど政治の失敗という喧伝が行われるだろう。


 さらに本当に驚いたことだが、武藤氏の次のカードに山口泰氏が控えていたこと。これで事前に噂される副総裁二席がすべて日銀出身だとオール日銀という事態さえも見え隠れする。山口氏の経済的なスタンスについては、私も彼が日銀時代に「金融政策で構造改革をすすめる」という誤った見解を何度も披瀝していたことを重視している。このような具体的な中味を伴わない発言こそ、今般の日本経済の脆弱性をもたらした政策目的のあいまい化を伴った日銀の漂流路線を端的に示すものだと思われる。それにしても日銀の政治巧者ぶりは際立つ。民主党の戦略は民主党自身よりも日銀の組織防衛に大きく力を与えることであろう。


 ここからは正味正真の床屋政談なので読み流してもらいたいが、ところで仮に武藤、山口の二枚のカード以外に選択肢はなし、と出されたらどうなるか? おそらく背後に暗黒波動が匂う 笑 武藤氏の方がわずかにましであろう。なぜなら政策転換の可能性がわずかにあるだろうが、山口氏ではただの政策の失敗を結晶化した意味での利下げやその後の後退戦・持久戦があるだけであろう。そうは思わないか? そしてこの絶望的な二択を考えると、理性が指し示すのは、やはり人物選択ではなく、どんな人物が選ばれるにせよ、彼にまともな政策を採用させる制度的な枠組みが現状でまったくかけていること、そしてそれこそ政治の失敗の最たるものであり、私たちが要求していかなくてはいけないものであることがわかる。伸縮的なインフレ目標もしくは名目成長率目標などもその制度改革の重要な一つであるがすべてではない。