エスワラン&コトワル『なぜ貧困はなくならないのか』


 半分読了。これは名著でしょうね。経済学の初歩を習得しながら工業化や国際化が貧困を加速化させる条件は何なのか(当然、加速化させない条件も書かれている)を丁寧に解説していて応用もいろいろできそうです。訳者も指摘していますが、インドの経済発展だけではなく、応用すれば日本、中国などのアジア諸国にも拡張できそうですね。特に経済格差問題について、いわゆるワーキングプア層が地方から都市部への流入にかなり依存しているならば、今日の日本経済の問題(例えばグローバル化が本当にワーキングプア層に影響を与えるとしたらどんな条件なのか)を考えるときの、ひとつの代替的な見方にもなるでしょうね*1


なぜ貧困はなくならないのか―開発経済学入門

なぜ貧困はなくならないのか―開発経済学入門


 ところで本書が書かれた後にインドはさらに経済発展を遂げてきて、このことは原著者たちにもひとつの宿題になったようです。去年書かれたばかりの以下のペーパーは本書の続きという位置にあると思われます。


How Does Poverty Decline? Suggestive Evidence from India, 1983-1999. By. Mukesh Eswaran, Ashok Kotwal, Bharat Ramaswami, and Wilima Wadhwa
http://www.isid.ac.in/~planning/ConferenceDec07/Papers/BharatRamaswami.pdf

*1:読めばわかりますが、この本の基本モデルは選好のあり方が非正統派的