付記:最初にhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080404#p4を読め
ブログ「限界革命」経由
http://www2.warwick.ac.uk/fac/soc/economics/research/papers/twerp_841.pdf
全米トップ10大学の経済学部に所属するAssistant Professor 112名のCVを調査。
1 「頭脳流出」の事実(学士号は75%米国外、博士号は87%米国内で取得)
2 実証経済学Empirical Economicsの重視(ヘイ(編)『フューチャー・オブ・エコノミックス―21世紀への展望』での懸念ー経験科学としての経済学の衰退と抽象的な数理的経済学が台頭しすぎる懸念ーはもはや妥当ではない)
- 作者: ガルブレイス,J・D・ヘイ
- 出版社/メーカー: 同文書院インターナショナル
- 発売日: 1992/11
- メディア: 単行本
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3 女性研究者は25%ほど.マクロ経済学、計量経済学、労働経済学は主要研究分野として人気
日本ではなんか人気有り気に喧伝??されている産業組織論、ゲーム理論、契約理論、ファイナンスは少数派みたいですね(付記:誤読ブログからの流入者用。この発言は原論文に依存する。原論文でもOnly a small proportion of them do purely theoretical workと結論を謳い、purely theoretical workはまさにゲーム理論、契約理論などを文脈上さすのは自明。仮に学会動向に詳しくないと田中を批判するならばそれ以上にこの調査をしたふたりも同様の趣旨で批判すべき。なぜそれがなされていないかをよく考えれば誤読ブログの狙いは自明)。そもそも日本のネットでは「マクロ経済学というものはない以上」という大胆な人がブームを起こし(笑)、それに呼応したかのような日本銀行出身・IMFエコノミストの加藤涼氏の『現代マクロ経済学講義』にも「マクロ経済学というものはない」観が展開されてましたが、そんなないはずの分野の研究を米国の若手が一番取り組んでいる、と表明しているわけなんですね。おかしいですね(笑)。
これ思いついたんですが、もし日本の研究関心が米国の研究関心とずれた、少数派の方に行ってるような気がするのは、日本の研究者や研究機関あるいは日銀(笑)がまさにニッチ産業化しているため、その産業化に適応してわが国の研究者の関心も誘導されているのかな、と思いました*1。ニッチではなく窓際にならなければいいですよね。
個人的なニッチな関心からいえば(笑)、欧米の研究者の業績やそのごく一部分の反映であるブログに僕が引かれるのは、やはり現実の問題に対する関心の高さ(今回の調査に明瞭に表れている)が彼岸の方が上回っているような気がするからかもしれません。
ところで日本では現状(21世紀)で、なおかつ若手に絞った同種の研究は存在しないと思います。ただ90年代後半に。池尾愛子さん、野口旭さん、akamac(赤間道夫)さんらが『日本の経済学と経済学者』を刊行し、同著は英訳も出されています。
そこでは日本の海外での学位取得者は経済理論・統計関連でも10%前後であること、さらに労働関連の分野への関心がかなり減少している事実などが書かれていました。さらに純理論的な関心の高さなどにも注目されていたのではないかと思います。
Japanese Economics and Economists since 1945 (Routledge Studies in the Growth Economies of Asia)
- 作者: Aiko Ikeo
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 2000/04/13
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日本の若手の研究動向調査は、日本でもネットを利用すればわりと簡単にできるかもしれないですね。