山崎元:[JMM472M] 円高を阻止する金融・経済政策は存在するか


 山崎元さんと僕で共通するものが少なくともいま二つある。一つは蕎麦が大好きだということと、もう一つはリフレ派(これは誤解を与えるので明言するが標準的なマクロ経済学の理解を指す言葉でしかない)であることだ。


 今回配信されたテーマについても論点が明らかであり、非常に説得的だ。

:そもそも「円高を止めたい」という目的を考えると、平たく言うと、日本の景気を
良くしたいからということでしょう。日本の景気の先行きへの懸念となる主な要因は
米国経済の悪化(懸念も含めて)でしょう。また、サブプライム問題の解決に目処を
つけて、米国経済が順調な成長軌道に戻ったと広く認識されるようになると、日本も
含めた世界の景気に好影響があるでしょうし、何よりもそのことが米ドルの回復にも
つながることになると思われます。:

 そして山崎さんはサブプライム危機が証券化商品のリスクが顕在化の段階に入ってまだ長期にわたり不安定な状況が継続すると見ています。また以下の福井総裁への評価は皮肉が利いていて読んでいて微苦笑しました。

: サブプライム問題に関する現状認識は、肩の荷を下ろして気楽になったためか、福
井前日銀総裁が退任会見で的確に指摘しています。世界の現状認識について問われて
福井氏は「リスクの再評価の過程、あるいはバリューの再評価の過程が続いてい
る」、「単に価格の値札を付け替えるだけではなく、値札を付け替えたならば、減損
処理と資本手当がいる。この苦しい過程がしばらく続く」と答えています。既に昨年
初から存在が明らかだったサブプライム問題の影響を軽視して「フォワード・ルッキ
ング」を誤り、二度も政策金利を引き上げた人物とは思えない、優れた現状要約だと
思います。:

 山崎さんの現状の危機への対応は以下のようです。

:日銀の話が出たついでに、もう一つの手として、日本の金利誘導目標引き下げとい
う手は、世界経済への協調という文脈で可能で、同時に円高の対策にもなりそうです
が、もともと利上げを志向してきた日銀が、しかも総裁不在でこのような思い切った
サービスをするとは思えません。

 状況を敢えて前向きに考えるなら、これまで輸出を有利にしてきた円安が修正され
た現状は、内需の成長を本気で模索するいい機会ではないでしょうか。:


 そして内需の成長を考えるキーはやはり金融的要因だと思われますし、その意味で日本銀行総裁の空席はまさに重大事だということに、山崎さんの論説から田中は思うのでした。