キム・ギドク『悪い男』(清算主義<暴力>と倫理の関係)&イ・ビョンホン『夏物語』

 ギ毒に汚染されてるオレがいる。『サマリア』はやはりすごい作品だと思うが、この『悪い男』もすざまじい作品。娼婦街を仕切るヤクザが、たまたま街でであった女子大生に一目惚れ、その場で強制接吻貫行。その後、陰謀を企て、彼女を娼婦にしてしまう。男は強制接吻以降はただ彼女が客をとり次第に娼婦然としていく過程をひたすら見守り続けるだけ。主人公の「悪い男」は劇中、この映画の核心を叫ぶ以外はすべて無言。ほれられた女も男への怨みと愛情が交錯してしまい、やがて海岸で掘り出した写真から「運命」を悟る。『サマリア』も『春夏秋冬そして冬』も、非常に強い倫理性とその裏返しのインモラルなエピソードが渾然一体となっている。また倫理が暴力なしでは語れないものであることをキム・ギドクの映画は体現しているとしたら、それはいま僕が考えている日本の清算主義の伝統とその倫理性との表裏の関係とも無縁ではないように思える(この関係を支えているのが、この映画にもあるように運命を見出しそれを受容するといった映画だったら主人公たちの造型、経済学であれば想定する主体や環境の書割りともいうべきものかもしれない)。


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 イ・ビョンホンの新作(監督はチョ・グンシク)は、女優のスエとの共演で60年代の韓国の世相を背景に、農村で孤立していた若い女性と都会から労働奉仕できた学生との夏の愛の経験とその別れを描いているもの。ギドク作品を連続でみた後にみると、非常に軽量に思えてしまうのは仕方がないのだが、もう少しメリハリがほしい。非常に単調なつくりで退屈な作品だった。しかしスエの眉毛濃いなあ。

夏物語 プレミアムBOX 3枚組 [DVD]

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