高橋洋一「一月利上げ騒動はなぜ起きたか? 政府と日銀の“共有”に大きな課題」


 心配して損なぐらい元気なようです。店頭にある『ダイヤモンド』に論文が掲載されてます。この論文の三分の二はこのブログでもお馴染みな主張が展開されています。例えばここここを参照ください。また現在これも店頭にある若田部昌澄さんの論説を参照ください。


高橋論説の要旨

1 一月の利上げ騒動(政府、日銀、自民党、マスコミ入り乱れての騒動に市場がうわさに翻弄)の真犯人は誰か?

2 政府・自民党が犯人か? 中央銀行の独立性を例えば中川幹事長らの発言が犯したとする見解があるがそのような指摘は、中央銀行の独立性が政策手段の独立性にすぎず、政策目標の独立性を意味しないことを忘却した指摘で妥当ではない。『フィナンシャル・タイムズ』の社説でも日銀の政策目標の曖昧さを指摘している(インフレ目標の導入の主張)、政府の意見を聞く必要が日銀にあるという論があったことを紹介。

3 「いわゆる日銀によりマスコミ、日銀ウオッチャーに対する“地ならし”」という「うわさ」が存在することが問題*1。))

「今回の騒動は、こうした日銀による地ならしを明確に否定できないこと、そして政府と日銀間に景気認識の違いがあること、共有するべき目標がないこと、この3つが原因なのである」


と明確に指摘していまして僕もこのブログで書いてきたように全面的に支持します。今回の日銀地ならしについてはここの当ブログのコメントも参照してください。


4 景気認識については、中川幹事長路線のGDPギャップ論争に高橋論説は加担してます。 要点はまだデフレギャップが継続していることを日銀と政府がもっと確認することでしょう。日銀はデフレギャップの存在を否定していますから。


 なお私見ですが、『上げ潮の時代』での潜在成長率推計よりも現時点の中川幹事長の見解はさらに上昇wしてますが、それでも政府ベースのものは日銀よりましでもやはり低いこと(中川最新バージョンとの乖離大きすぎ)、さらに潜在成長率の推計自体がたぶんに理論的論争で決着がつかない見込みがあるのを含めると、この論争にあまりにも執着するのはかえって危険(=現状と大差ないゼロインフレ近傍にロックインされる可能性あり)なように思えます。方向性の共有=デフレの現状での継続、さえできれば、あとはインフレ目標の設定をして市場にまかせるのがいまのところ最善ではないでしょうか?


5 日銀の政策目標も現状では欠落。政策委員の「物価安定の理解」も政策目標とはいえない日銀の勝手な数字、とばっさり。しかも消費者物価が0%を少し超えただけで金融引き締め。ゼロ%が目標かのよう。しかし上方バイアスの存在などを加味すると、これまたお馴染みのw 日銀は「デフレ目標」を採用してしまったいる説を主張しています。


6 インフレ率は欧米並みの2%が政策目標として望ましい。テイラールールを用いた政策金利の導出をして指摘して、アメリカではこのルールでFFレートの動きの9割説明可能であり、日銀もそのような経済学的にも支持できる政策を採用する必要性を高橋論説は主張しています。


7 それと私は本石町日記やその周辺のコメントを読むと毎度思うのですが、この種の日銀担当マスコミやウオッチャーの利権構造(日銀の政策目標の空洞化の方が望ましく、政策ルールの明確化を実務の知恵として隠蔽する態度やそれを肯定的にネットも含めて流布する態度、本石町日記の主張を含めてこの日銀派といわれる方々はインフレr目標の導入に消極的です+もっとも最近は日銀派マスコミはそろりそろりと転向中なことも同日記を追えば明確ですが)はいかがなものかと思っています*2。そのことについてもきちんと高橋さんは指摘しています。


「政府と日銀が共有する金融政策の目標が明確になると、従来当局に顔がきき早耳情報に頼っていたマスコミ、日銀ウオッチャーは従来のアドバンテージが失われる。逆に、そうした早耳情報ではなく、地道に経済指標を分析しているマスコミ、日銀ウオッチャーは新たに道が開かれる」。


あとは同誌をご覧いただきたいのですが、他にもいまならば利上げでなく利下げだろうとかw 、また国債償還ルールについても興味深い発言をしています。

ぜひご一読ください。

(おまけ)あと高橋論説の次に掲載されてる山崎元さんの「「投資信託の怪しさ」の核心部分」を読んだのですが、効率市場仮説ぽいスタンスと手数料の高さという切り口で投資信託の「怪しさの核心」を書いてるのですが、う〜ん、それって投資信託以外でも成立しそうな話みたいだよなあ=イコールこの論説の切り口でいろんな金融商品取引の「怪しさの核心」がかけちゃうノウハウ満載 爆

*1:以前、これはbewaadさんが地ならしの誤用であると福井総裁辞任辞任必要なし論争のときに指摘してましたが((http://bewaad.com/20060618.html#c01以下のコメント参照ください一般的に日銀の地ならしは90年のゼロ金利解除以前?も以後も存在してますから、私やドラめもんさんのこの言葉の流用はそんなに誤りではないでしょう。ちなみに「うわさ」のネット初動地は僕とドラめもんさんでしょうか 笑

*2:http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070118#p2の最後に私も指摘したことがあります