“日銀副総裁「政府は成長戦略の推進を」”についてのコメント

NHKニュースより http://htn.to/buHmgMAiyv
岩田日銀総裁の当該講演 http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140526a1.pdf

 一昨日、野口旭さんと雑談した中でこの話題に類したものを話し合った。
この副総裁の発言を、旧日銀の白川的発言と同じだと解釈する旧日銀系の論者が多い(リフレ派でも誤解する人がいるかもしれない)。つまり彼らは、いまの日銀も昔の日銀と同じく、責任逃れをしているといいたいのだろう。面白いのだが、旧日銀系の論者はもちろんその白川総裁時代にはそのような「責任逃れ」批判を白川総裁にしたわけではないのだが(笑)。

 だが、インフレ目標の政策フレームワークの中で成長戦略に言及するのとしないのとでは、まったく意味が違う。もちろん日銀が政府の経済政策に注文を付けるということ自体が逸脱である、という批判はあるかもしれない。これは私見だが、いまも書いたように、日銀がその責務を明確にしている中での政府への発言は、僕は積極的に評価する。これを批判的にみなす(旧日銀と変わらん等)と、旧日銀勢力に利するだけだろう。ただでさえ、彼ら&彼女らはいまの日銀のインフレ目標を中心にした透明性と責任が明示された政策を、一年少し前までの曖昧な責任と不明確な目標を伴った旧日銀の因習に戻そうとやっきである(実際にはただ外野で批判しているだけだが)。

 ちなみにいまの日銀からは、彼らのシナリオ通りいけば(これについては僕は批判的だ)、1年以内にインフレ目標を達成し、失業率もかなり低下する。その段階で政府がみずからの責務(成長戦略)を放棄して、マクロ政策にまだ圧力をかけてくることは日銀的には許容できない。それを先制する意味はある。

 いずれにせよ、日本銀行インフレ目標は(多くの不安定要素はあるものの)いまのところは合格点だ。それに対して政府の成長戦略は、まさに副総裁の発言のように、まったく遅れているように思える。この点については、若田部昌澄論説を参照されたい