橋本努の左右田喜一郎論


 傑作。ただし僕は反論があるけども。

 以下の本(『日本の経済思想2』日本経済評論社)は編者の方針にかなり濃厚な疑問符がつくのだが、橋本氏の論説「左右田喜一郎」は、左右田の生涯と著作の意義を現代の読者に初歩から解説することに成功していること、さらにアドバンスな議論に立ち入り、生存権や限界効用仮説を否定した左右田の文化価値の経済哲学の特質を鮮明に描いている。非常に刺激的な論考である。


経済思想〈10〉日本の経済思想(2)


 おそらく橋本氏も左右田を非常にシンパシーを抱いて読んでいるのがわかる。最近では塩野谷祐一氏の『経済と倫理』に収録された左右田と彼の批判的後継者であった杉村廣蔵の比較論説が書かれているが、橋本氏の論説は自由主義(経済)を支える相対主義多元主義の一類型を左右田の議論に見出すことを試みている。