『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』

トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇

　一瞬みのもんたネタにしようかと思ったが、その詳細な取材に敬意を表し経済ネタで。ただしここでも田中の粘着先生ぶり？を発揮して、9月下旬〜10月中旬の噂される福井総裁辞任まではこのネタはすべて総裁にひきつけてカキコの予定。

　で、冒頭から福井総裁を本書は「嘘」つき呼ばわりでございます。まあ、途中でミサイルが飛んできたのをいいことに、身内のヤバイところと一緒に追及をあやふやにした某野党と違いますなあ。本来なら国会での総裁の証言の小出し＋矛盾を以下のように指摘するのがスジでしょ？

「福井は「出資した1000万円がいくらになっているのか」との国会議員や記者団の質問に、発覚後しばらくは「いくら儲かっているか分からない」で押し通そうとした。「少ない年は数十万円、多い年は数百万円」との曖昧な表現で幕引きを図ったが、国会や記者団の追及に抗しきれず、6月20日についに実額を示した。当初の1000万円が7年弱で2473万円（2005年12月末）。略　当初、「儲けは巨額ではない」としてきたことは嘘だった。しかも「あくまでも帳簿上の利益」と未実現利益だと主張してきたが、実際には242万円の分配金を受けていたことが分かった」（同書４頁）。

さて内容を上のように福井総裁スキャンダルに関係ありそうなところ＋田中的に関心を引いたコネタを交えながら書きます。全体のバランスのいい書評を意図してませんので悪しからず。以下、書籍にあわせて敬称略。

序章「暗闇坂」　ちょっと食事の用意ｗ　食事長すぎマスタ。

　運用資産は4444億円なのに、運用実績地味すぎ　04年までは平均年率10％程度。ただしインサイダー取引の疑惑があるニッポン放送株への投資が05年は年率55％に急上昇

　村上Fのシードマネー38億円　→　138億円。それ以外は海外の新規資金（割合83％）。

「村上ファンドへの資金大量流入で一役も二役も買ったのが、某証券会社である。村上ファンドは、この証券会社に、売買注文の多くを発注していたとみられている・巨額の顧客紹介手数料や売買手数料が同証券会社に落ちたことは想像に難くない」（19ページ）。

ヒルズ投資倶楽部ｗ＝六本木ヒルズのインナーサークルｗ

第１章　

東証での村上会見。“兜クラブ”が事実上運営。それ以外はオブザーバーで（原則）質問権なしｗ。
村上Fの会見手法→米国アクティビストファンドの使う選択的なミーティング方式の熟達者。
会見自体は印象操作濃厚。事実としての犯罪。

第２章　村上人脈

　村上人脈の特記人物
１　グッドウィル･グループ会長兼CEOの折口雅博
２　自民党衆院議員　西村康稔　（灘高、東大、旧通産省、村上の二年後輩。村上人脈の「尾根」そのもの）
３　旧スクェア創業者宮本雅史
４　林良造（東京大学公共政策大学院教授、子息が村上Fで働く）他多数。

東大人脈の記述では座席の座り方の記述、植草氏の記述、鹿古木裁判長の記述などが面白い。しかしこんなに東大は同期がなにしているかをきちんと把握してるのか。ある意味驚き。ああ、早稲田ごときは把握しても得にならないから把握しませんか、そうですかｗ

　旧通産人脈は、灘中・灘高人脈ははしょって、この3つの人脈にのっかる最大の人脈は経済同友会（宮内）人脈、ということになる。私もこの人脈に大いに興味あるね。なぜなら速水元日銀総裁時代以前からこの同友会イデオロギー＝構造改革主義が日本の停滞もたらした元凶に思えるからです。

　村上Fへの正当性を与えたのは宮内氏（オリックス会長、総合規制改革会議議長）。同友会の若手経営者・政治家の「次代を創る会」への村上、木村剛が足繁く出入りしたことは有名。
「ちなみにこの木村剛は、二〇〇〇年九月にNPO(非営利団体）の金融イノベーション会議を発足させた。当時、「福井俊彦を日銀総裁にする会」と目された。福井同様、木村もまた日銀OBである。福井は木村が入行するときの面接担当官だった、という奇縁を持つ。同会議の発足当時の理事は、日本総合研究所主席研究員の翁百合、東京大学大学院教授の神田秀樹、政策研究所ハーベイロードジャパン代表財部誠一、慶応義塾大学教授の竹中平蔵、早稲田大学大学教授の西村吉正、富士通総研理事長の福井俊彦、三國事務所代表の三國陽夫、成城大学教授の村本孜（肩書きは当時）。2004年10月に木村が創刊した月刊誌『フィナンシャルジャパン』で、福井と竹中が創刊号の表紙と巻頭を飾って物議を醸したが、福井と竹中を担い出すことができたのは、このイノベーション会議の存在が大きい」（69-70）。

また後で続く

しかし「縁故投資」がインサイダー取引に変容していくってのがこの本の主要テーマなので、人脈の記述が本当に詳細。福井総裁関係に鋳直してもかなり分量多し。というわけで明日に続く。