さて今週の最強の専門誌『日経公社債情報』です。今号は夕張市の財政再建団体転落をものすごい力瘤?をいれた特集や、オリックス・ショック(REIT市場での)など興味深い記事が多いですが、とりあえず「日銀ウォッチ」。ドラゴン桜さんの「「需給ギャップ」を再考する」です。
日銀の潜在成長率の可変性を利用したインフレ率の感応度の低下傾向という組み合わせへの批判となります。
潜在成長率というのは、経済の存在する資源(労働、資本など)を完全利用したときに実現できるとされる潜在GDPの成長率を指します。これが(a)日銀は90年代から02年ごろまでの潜在成長率が1%以下の水準、それがそれ以降現在までは1%台後半まで回復と説明。同時に(b)消費者物価上昇率が緩やかにしか変化しない理由をIT化やグローバル化で説明しているわけです。
通常、(a)ですと潜在成長率を上回る現実の経済経済成長率が見られれば消費者物価上昇率は加速しても不思議ではない。しかしそうではない現実を、日銀は(b)の論理で説明していることになります。いいかえますと景気回復がまだ本格的ではない(=リフレ派みたいな人w)に対して、消費者物価上昇率はそれほど変化してないがもう十分景気は過熱化して引き締めキボンの状態だよ(日銀)ということをいいたいためのロジックです。
これに対してドラゴンさんはドラァゴラァと吼えます。
(1)潜在成長率は90年代もそんなに低下してないよ。むしろ需要の落ち込みのほうが大きく、デフレギャップが拡大し続けた。
(2)デフレギャップは大きいので景気がよくなってもそんなにインフレ率は上昇しない
(3)日銀の潜在GDPの推計には問題あり
(3-1)パート比率や労働力比率の低下を「構造的要因」で考慮してるけど、これって(大竹vs森永・田中論争や玄田ニート批判でもおなじみの) 景気が悪くて失業、求職意欲喪失者の増加やパート比率の高まりという「循環的要因」じゃないのよ。()は田中補遺。
(3-2)実際に景気回復して労働力比率が高まってる(最近、正規雇用だって減少傾向から増加傾向へ弱いながらも変化してんじゃないの)。()内は 田中補遺
(3-3)日銀はこの労働力比率の下げ止まりも構造変化といいかねない。(構造要因が一年や二年で大変化するとはとてもいい構造要因ですね、奥さ ん) ()内は田中補遺
(4)だいたい地域経済に目を転じれば雇用面のスラック(≒資源の未利用)が存在するのは自明。だから高い成長率でもインフレ率は加速しないのだ、バカボン(バカボンは田中補遺)。
(5)つまりスラックがない≒資源の完全利用を前提にして高い成長率+インフレ率の緩やかな上昇をいうために、そうそのためにこそ、日銀は高い潜在潜在成長率が必要なんじゃないの? まるで潜在成長率が景気に可変的に思うまま変化しているようですよ、奥さん!(奥さんは田中の補遺、念為)。
以上。
まったくこれを前提にして金融政策の舵とってんですぜ。その帰結は行き過ぎた引き締めか、あるいはうまくいったって名目成長率の安定化殺し=ドーマー定理(財政再建のソフトランディング)殺しや、リフレ殺しですなあ。(ーー)
*技術的補遺のために記事より引用
「日銀は新しい需給ギャップについて、「短観の設備・雇用判断DIの加重平均と極めて似通ったものになっている」というが、例えば、雇用判断DIゼロは単に社内失業が解消されたことを示しているのであって、経済全体のスラックが無くなったことを意味しているわけではない」。
○ふへ〜とりあえず一件脱稿。
続いて三木・笠論の拡張版へ……(ーー;)。氏むよw