英 The Economist誌での日本の不平等論争の紹介


The rising sun leaves some Japanese in the shade

http://www.economist.com/world/asia/displaystory.cfm?story_id=7066297


景気好調で、完全失業率も低下、新卒採用も増加、しかし他方で不平等論争が過熱している日本の論壇の状況を簡潔に説明。


定番の日本のジニ係数を用いた不平等の悪化はあるか否か論争をまず紹介しています。橘木俊詔先生の日本は不平等が悪化したという説に対する大竹文雄さんの批判(所得格差の大きい高齢世代が増えたことによる人口効果が大)を紹介したあとに、30代以下の若年雇用状況が非正規労働者の拡大や失業によって90年代から05年まで悪化していることを指摘します。


 そして本ブログでも以前ふれましたモリタク森永卓郎)先生と大竹さんのタクシードライバーの雇用状況をめぐる論争を紹介しています。ちなみに大竹さんだけ名前がでてまして、モリタク先生はCritics(匿名さんですね)扱いですね、ちょっと不平等 (^^;)。それはさておき同誌は大竹さんの主張を支持してまして、規制緩和があってドライバーが賃金低下ながらも職をえたことが日本の所得格差を縮小しただろう、と書いてます。なぜならそうしないと彼は失業しただろうからと。同誌は基本的に雇用の流動化が日本経済を停滞から脱したという貢献を認めてますので、これは過去のエントリーhttp://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20060531に書いたように私やモリタク先生とは基本的な認識が違うのです。はたからみたらすごくわかりにくいかもしれませんが。簡単にいうと不況の原因判定の差異でして、規制緩和で不況が改善すると考えるか、考えないかの違いともいえます。


 日本の不平等の問題はアメリカなどに比べると深刻なものではない、というのが同誌の判断です。さてもちろん同世代内で所得の開きが大きい高齢世代が増えていくと、彼等の子孫たちに富の不平等(相続財産の不平等)が生じる可能性も指摘しています。橘木先生はさらに若年層でいったんパートやアルバイトになったものが正社員になることが難しい日本の労働市場の問題点を批判しています。この後者の問題については、今月の『Voice』に拙稿を寄せましたが、景気の拡大=リフレ過程の継続があれば正社員としての雇用も増加してくるだろうと予想しています。ご参照いただければ幸いです。

いずれにせよ、同誌らしい簡潔な日本の不平等論争のまとめでして一読の価値はあります。