蒲焼の匂い:日経公社債情報:「流動性の罠から抜け出した?」

 旧ブログ同様、日経公社債情報の蒲焼の匂いです。末吉さん名義の「流動性の罠から抜け出した?」という論説が掲載されています。日本の長期停滞を「流動性の罠」に陥った状況として描写します。デフレ予想と短期金利がゼロ境界下限に達したために、経済を刺激するのに必要な実質短期金利が非常に低い(クルーグマンはマイナスですが、末吉さんはこれにこだわらないようです)ならば、たとえ短期金利をゼロであってもそれは十分な金融緩和になりえない、これがまさに「流動性の罠」の状況である、とします。

 流動性の罠に陥ると金融政策の無効化、そして財政赤字が巨額のための政治的制約ゆえの事実上の財政政策の不可能性、という従来のマクロ経済政策メニューが通じない状況になる。

 しかし構造改革によって高収益機会を増やし、実質金利が高止まりしても設備投資が行えるような、香西理論(違、末吉さんはそんなこと書いてません念為)状況にもっていくという主張が原理的には可能。最近の景気拡大はデフレの中の改善なのでこの構造改革の成果という主張も信憑性ある。

 さてこれからですよ、末吉さんの香西理論=山崎元さんご納得論 を巧妙に打破するロジックは(あ、どこかの掲示板の見すぎ? こりゃまた失礼m()m)

 「そうであれば、持続的な景気拡大は過去10数年と比較すればより高い実質金利の下で進行することになるはずである。
 問題は、実質金利が高い水準を維持して景気が拡大を続けるならば、当然ながら為替レートはそれまでの不況期よりも上昇しなければならないということである」。

 「では、日本経済は果たして円高に耐えられる状態にあるのだろうか? いま起こっている株安が、アメリカの株安の一時的な影響によるものではなく、2003年(ここ2004年ですが修正)の大規模介入の理由であった110円割れ寸前の円高が起こっているのだとすれば、構造改革による流動性の罠からの脱出という筋書きは画餅である」。

 としています。周到な香西理論批判と現状への厳しい評価です。

 OECDの見方については後記。群馬から帰らなくちゃ


(付記)で、帰ってまいりましたよ。しかしすごい豪雨だったなあ。高速で前が見えなくて死ぬかとおもったよ。(@@;)。ず〜っと前、今日みたいな豪雨で前がみえず、60キロくらいで高速を走っていたら、前にいたトラックがさーっと横の車線に移ったと思ったら、道の真ん中に巨大なダンボール箱(たぶん)。ゴルゴ13じゃない僕はもちろん除けることもできず減速したまま、あとは突入! 中味はなにもなくまあこうして無事、ブログをやっているわけですが(ほかにすることないのか、原稿書け、田中内面の心)。

 ああ、いけないOECDの報告ですが以下に要旨が。有するにゼロ金利を続けろと。インフレ目標の下限もデフレに陥らないように上げろと。そして内需が堅調で、なおかつ失業率が改善しているので(3.5%まで改善する見通し)、おそらく来年の末までには1%のインフレになるだろうよ、という見込みです。このゼロ金利を継続することがリフレ効果をもつことは野口さんの『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済新報)をはじめほぼリフレ派の合意です。僕は前にもいいましたが、明確なレジーム転換のない「時間軸効果」の継続によるリフレ政策はサードベストにすぎないのですが、それでもサードベストなりにきちんと実行してほしいと思っています。

http://www.oecd.org/dataoecd/45/48/20431842.pdf