田中秀臣の最新経済ニュース「新型コロナウィルスショックで日本は“戦時経済”に突入した」in Schoo

ネット講義の最新回です。今回は田原彩香さんと僕はそれぞれ自宅から放送、それをスクー側が画面で統合して配信しました。来月もその可能性が大きいと思います。試行錯誤ですが、頑張りますね。

 

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さてTwitterの方で連投したものをこちらにも。放送ではもう少し丁寧に話してるのでぜひアーカイブもご覧ください。

アーカイブはこちらから。お試し受講で冒頭も無料でみれます。

https://schoo.jp/class/5309

 

twitterでの発言と放送でも使ったパワポ(一部付記など)。

新型コロナウィルスショック経済の特徴は、1)根源的不確実性の世界。ナイト的不確実性vsリスク
2)「感染拡大の抑止」と「経済活動の維持」のトレードオフが厳しく存在。
例:景気過熱すると経済活動活発化⇔感染拡大
ではどうするか?

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以下、経済分析の手法は45度分析を利用して、金融政策スタンスは緩和的だが追加緩和は当面考えない(ただの理論的な仮定で、現実に追加緩和するなといっているのではないことに注意。仮定を置いた推論)。財政政策で完全雇用GDP>現実のGDPの設定で考える。

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45度分析を含むマクロ経済学の初歩の解説では、飯田泰之マクロ経済学の核心』(光文社新書)を座右に置くこと推奨。この分析ツール以外に、IMFのスタッフのブログ記事「新型コロナウイルスと戦うための経済政策」が有用。フェース1(感染拡大期・戦時)とフェーズ2(戦後、感染収束期)の理解重要。

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(最重要)フェーズ1は感染症抑止と経済活動の水準のトレードオフがめちゃくちゃ効いてる時期。非常事態宣言にある日本なら想像簡単かと思います。ではフェーズ1のときに求められる経済対策(=ここでは財政政策)の規模はどのくらいか? 
答:完全雇用GDP水準で公的に「囲い込む」!

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この公的「囲い込み」(田中造語)は、従来の景気刺激をして現実のGDP完全雇用GDPの乖離(=GDPギャップ)を“埋める”政策の発想とはまったく違うことはこの一つ前のツイートに掲げたスライドで明瞭。仕事がないが雇用を失わない、生活水準も下げない、またお客さんはこないが店舗は倒産しない世界。

フェーズ2は従来と同じ政策が活用できる。ただしここで根源的不確実性が重くのしかかる。いったいフェーズ2っていつくるのか問題。つまりフェーズ1とフェーズ2のブリッジ、あるいはフェーズ1の2を見越した政策構築も必要になる。ここはオープンクエスチョン。
とりあえずフェーズ2のスライド。

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ではフェーズ1の政策が目指すのは、完全雇用GDP水準(厳密にいえばこれを超えても下回ってもいけない政策実現度超難度な的あて)だとして、現状からその水準までどのくらいの対策費が必要か?
GDPギャップの推計。政府の緊急経済対策は内閣府のを採用しているので以下それをベースにする。

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2020年の需要不足(完全雇用GDPと現実のGDPの開き=GDPギャップ)は約32兆円。リーマンショック超えを前提にした試算的数字。もちろん何度もいうが根本的不確実性の存在のためにこれは目安。これよりも小さいかもしれないし(すごく小さいといいのに!)、大きいかもしれない(そうでないことを祈る。

 

(重要)フェーズ1の政策は厳しい的あてなのに、その的が大きくなったり小さくなったりしている状況。なんだこの世界は? 残念ながらそれが我々の直面している経済世界。だがそれでもやらないといけない。先ほどのGDPギャップを埋めるのが、事業規模とかでないいわゆる“真水”。だがこれも修正が必要。

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現実の日本の経済政策と予算規模(産経新聞より)。予算案詳細はあとで確認。この記事をもとに通常の景気刺激の「真水」とフェーズ1対策としての「修正された真水」の規模を計算すると以下の図表に。さきほどの暫定的な的=需要不足32兆円にほぼ「修正された真水」は該当。では問題解決?ノー!。

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このノーの意味はわかりやすいだろう。
緊急経済対策はこれから国会で審議され、ただでさえ評判悪いのでもめそう=政策決定ラグ(遅れ)
所得制限なんかしたから給付金が出るの遅れる問題=支出ラグ。他方で現実は「根本的不確実性」の世界が支配。的が的でなくなるかも?!。

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昨日のニューズウィーク日本版の野口旭さんが指摘した点も重要。なぜかIMFのフェーズ1レシピには明示されてない。金銭的補償がないと感染抑止の民間のインセンティブがつきずらい。なんで国はしないの? それは冒頭のトレードオフでBDの組み合わせを選んでるからか。その目論見あたるといいね(棒

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では、どうすれば? 現状の不確実性は時間の経過とともにむしろ増していく。スピードこそが命だ。ならいまやりべきことは以下。まだいろいろある。日銀の民間や地方政府(日本なら都府県)への貸出をまさかFRBが先にやるとはw 恐るべし。

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さてこれが最後です。スクーで話したことに多少付け加えました。スクーもっとみんな見てほしいな。見てない人が質問してくるとちょっといつも残念に思う。それってスクーやおは寺で何度も言ったんだけどなあって。BIについては安田洋祐さんに触発されてフェーズ1とフェーズ2のブリッジ候補でこそっと

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以下はさらに付言

スクーやって思ったこと
1)二月前、ひと月前、と現在では経済情勢が違うことがなかなか認識されてないこと。ましてや将来時点での経済予測が「根源的不確実性」で読みにくいことへの理解がなされてない事
2)消費減税0%を景気刺激だと誤解している人が異様に多いこと。代替財源を述べてるのに。

3)日本における消費減税がまるで無罪放免かのように思い込んでる人が多いこと。何度も一律所得課税で代替しているとしても、MMT的な消費税0%で景気浮揚みたいな暴論と同じだと思ってる人がいること。番組中に何度も所得税の話をいっても視線が消費税だけに行く人が多いこと。MMT汚染的状況。

4)スクーの何年も前からベーシックインカムを議論するときに採用している、原田泰『ベーシックインカム』(中公新書)をベースにした話でしかないのに。BIを原田案の半分ぐらいにして消費税0%、その代わりに一律高めの所得税。もしくは地方財源的消費税は残す可能性もある。この種の理解ができない。

ちなみにひと月半前は、かの「破滅博士」は世界経済の落ち込みは1.5%のプラス域で、当時、日本とイタリアが景気後退に陥るとつぶやいていたレベル。このひと月半で、慎重であるはずの国際機関(IMF)のトップでさえリーマンショックを超える可能性を示唆している。この事態の速度と「根源的不確実性」。