岩田規久男日銀副総裁講演&記者会見:リフレ政策への無理解への反論と5年間の総括

岩田先生が日銀副総裁としておそらく最後の記者会見を行いました。それに先行して行われた講演の内容も素晴らしいものでした。

 講演の要旨は、日本銀行の金融政策、特に「イールドカーブコントロール」の有効性に主眼を置いています。また政府があまり過度に財政緊縮スタンスを採用するとインフレ目標達成が困難になること、さらに緊縮政策の主目的であるはずの財政の中長期的な健全化にも赤信号がともることを、日本や欧州の事例の比較も加えて解説しています。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2018/ko180131a.htm/

さらに記者会見では、「デフレは貨幣現象であると、マネタリーベースを増やせば予想インフレ率が上がるのだ」と岩田先生の発言を解釈した記者に対して、「君はお話にならんね」(意訳)と僕も120%賛同する答えをあげてます。

 当たり前ですが、過度に緊縮に触れた財政政策と金融緩和政策であれば政策の効果は大きくそがれるでしょう。また単純にマネタリーベースを増やすだけではなく、購入する資産の構成も重要でしょう。そしてさらにとりわけ重要なのは日本銀行インフレ目標達成へのコミットメントです。これがわからない人が、相変わらず「リフレ派はマネーをじゃぶじゃぶやればインフレになると思ってる、そしてこんだけマネーじゃぶじゃぶでもインフレ目標五年たっても達成できない。リフレは間違い!」とその理解自体が偏見と昔から続いてる誤解と無知に依存したひどい言説を続けています。いったいいつになったら我々の発言をちゃんと理解するのでしょうか?

岩田先生の発言を以下に引用します。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180201a.pdf
<もう 1 つは、量を増やすだけでなく、例えば、短期国債だけではなく、
長期国債を買わなければならないなど、量をどうやって増やすかということを 申し上げました。あるいはもっと大事なこととして、コミットメントについて 申し上げました。つまり、この政策をやっても実は効かない、と言ってはいけ
ないのです。しっかりと、どのようなメカニズムがあるので、2%を達成する まで日銀がコミットするのだ、だから先送りはしているけれども、2%の達成 目標は降ろしていない、と説明することが大事です。これがコミットメントで
あり、この枠組みの中で長期国債を買ったりすることによって、予想物価上昇 率が上がってくるわけです。単にマネタリーベースを増やすだけで、いつ金利 が上がり、早すぎる出口になるかといったことを人々が思ったのでは、予想物
価上昇率は上がらないのです。コミットメントを伴った量的緩和、あるいは 「イールドカーブ・コントロール」が大事です。そういう意味で、単純にマネ タリーベースを増やせばよいと申し上げたつもりはありません。コミットメン
トが非常に大事です。FRBでは、2%を一時期ほぼ達成しましたが、雇用の 最大化を目指しているうちに、逆に 2%から遠くなりました。FRBのマンデー トは、雇用の最大化と物価の安定という 2 つです。このため、コミットメント
の力が強く、だからこそ皆が信頼するのです。日本も、コミットメントを強く して、2%まで物価を上げるという経験をしないと、なかなか予想物価上昇率 は安定しません。従って、予想物価上昇率が安定するまでは、今の金融政策の
枠組みにコミットすることが大事です。安易に早く出口に出たいなどと言って はいけませんし、2%の目標にまだ遠いにもかかわらず、正常化を急ぎたいと か、非伝統的は嫌だとか、そうした態度は予想物価上昇率が上がらない 1 番の
原因になります。そういう意味で、これだけ詳しく言わないと、実は真意が伝 わらないということです。そこに難しさがあります。>

さて記者会見では岩田先生は2001年の八田達夫先生との共著を推薦図書にしています。この本は僕も座右の書です。当時はあまり売れなかったのですが、今日的意義がありまくりです。

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