浅田統一郎「利潤率と経済成長率の関係ーピケティ理論の批判的検討ー」in『季刊 経済理論 』第55巻第2号

浅田さんから最新論文を頂戴しました。ピケティの『21世紀の資本』が一時期ベストセラーになり、日本でも大きな話題になりました。ところがピケティがアベノミクスを評価したとたんになぜか日本のマスコミの取り上げが消滅した印象があります 笑。わかりやすいですねw

 

浅田さんの論文はとても面白いです。とくにピケティが経済格差がこれからどんどん拡大する根拠としてあげた「ピケティの基本方程式」が、たとえこの基本方程式が成立したとしても格差が一定のままのケースを、ポストケインジアン的な分配理論の枠組みを利用して解説しているところが面白いです。

 

個人的にポストケインジアン的な分配理論はまだ価値をもっていると思っています。

 

それと浅田さんの論文のさらに面白いところは、このマルクス経済学の牙城であるといっていい『季刊 経済理論』に掲載されたことです。しかも浅田さんの論文の後半は、アベノミクスが経済格差の縮小をもたらした可能性を時論的に書いたもので、浅田さんからの聴いたのですがw、そこがもっともこの論説の言いたいことだったようです。

 

アベノミクスは再分配政策そのものではないのですが、それでも雇用の改善などを通じて経済格差の縮小に貢献できる面はあります。そこを浅田さんの論説は専門雑誌の掲載論文の中で提示したことに学会目線での意義がありますw。

 

なお同様の趣旨は以下のエントリーも参照ください。

アベノミクス下でのジニ係数、相対的貧困率、子どもの貧困率への歯止め、そしてGDPギャップ拡大そのまま - Economics Lovers Live 田中秀臣のブログ

 

浅田論文の掲載されている専門誌はアマゾンでも購入できます。

 

 この論文の原論文的な位置にあるもの。

不等式r>g は格差拡大の必要条件でも十分条件でもない──ピケティ命題の批判的検討── | 著者名検索 | 中央大学 学術リポジトリ