勝間和代『「有名人になる」ということ』

 勝間和代さんの存在を知ったのはかなり前だと思うけど確かな記憶はない。たぶん本屋の店頭で自転車に乗ってる仕事のできる女性風のビジュアルとして心のどこかにある程度だったろう。その勝間さんが僕の中で特別な「有名人」になったのは、09年の後半、「勝間和代がデフレ脱却を主張している」ということを小耳にはさんだあたりからだ。ここから上念司さんとの「再会」などいろいろあるのだが、その話は省略して、それから勝間さんと直接お会いする機会もあり、また著作もまめに読んでいる。本書で共著も数えるとだいたい9冊目(もっと多いと思ったけど)、特に「カツマブーム」がひと段落してからの著作で、本書では中味が充実していると自己評価されている2011年の著作が大部分だ。

 本書の内容は、いろいろな人がすでに語っているので詳細にはふれず大まかな感想を書いてみたい。

 何冊か今まで勝間さんの本を読んだ経験でいうと、いままでの本の中でもかなり読みやすい。ひとつには、勝間さん自身がまだ「有名人になること」の頂点に達した経験をもっていないこと、それを自覚して謙虚になっていることが、あげられるのではないだろうか? 確かに、勝間さんが有名人だが、有名人のハイアラーキーはかなりな峰の高さだ。経済評論家ではトップ水準だが、それでも評論家では本書でも(勝間さんの次のロールモデルとして)でてくる大前研一氏や田原総一郎氏に有名度では劣るに違いない。さらに大前、田原両氏でもテレビでレギュラーを多くもっている芸能人、例えば南海キャンディーズの山ちゃんと比べればストレート負けであろう。山ちゃんでさえ、世界水準からみると、せいぜい並みの有名人であろうw。ことこのように有名人の峰は高く、複雑でもある。さすがのわれらの(?)勝間さんもいきおい謙虚な姿勢で本書は終始一貫、むしろ「有名人」になるミッションをなんとかやりとげたその達成感に、私たちもなんらかしら共感することができる目線の低さが読みやすさの原因ではないだろうか?

 先日、僕も1秒ぐらい映ったw 「金スマ」でのダイエット企画や、今後のテーマのひとつであるゴルフ本などへの意欲も本書は知ることができ、勝間さんのいままでとこれからのちょうど分岐点を知ることができる点で、勝間和代入門として最適だろう。

 ところで、『週刊東洋経済』の連載で宇野常寛さんや、また『新潮45』で古市憲寿氏がちょうど同時期に、勝間和代さんの「有名になること」の戦略とその評価を書いて、いままた(勝間さんのブレイクと同じように)『情熱大陸』から出てきたノマドワーキングブームの安藤美冬氏とを対比している。ノマド対カツマ― という対比も「有名」、セレブレティの意味を考えるうえで興味深いものがあるかもしれない。

 

勝間和代関連エントリー

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http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20091204#p1



なおセレブや有名人の「ひとり勝ち」については、経済学的な観点から以下にエッセイを書いて収録している。

不謹慎な経済学 (講談社BIZ)

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