経済学をまったく知らないと、経済学の教科書の冒頭の諸概念(機会費用、需要供給の分析など)を理解すると、なんでこんなことを勉強しなければいけないのか? と素朴に思うことがあるだろう。あまり現実の課題と結びつかないという印象がある。
特に高校生のおそらく終わり近くで、すでに推薦などで経済関係の大学にいく人達、または高校を卒業して新しく大学に入る就学前の人達には、どうしても独学で勉強する時期があるだろう。そのときに上記の素朴な疑問がかならずでてくるはずだ。実は僕もそうだった。
本書は、経済学の主要三部門(ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学)の中で、最も初心者が取組みに努力が必要な(その多くはなぜこの概念が経済学の理解に必要なのかでためらいがあることだろう)基礎的な概念を、著者の体験やまたシンプルな政策的応用を見据えて解説していてとても親切である。
このときの「親切」はよくある非専門家たちの書くようなわかりやすさではない。応用との接合を見据えたものである。本書は無差別曲線というミクロ経済学を習う最初の難関(なぜこの概念が必要になるのか? という理解)を、とても丁寧に解説していて、おそらく入門レベルでは類書がない。しかもさすが社会選択理論のプロらしく、「必要原理」の話も入れているところが憎い(笑)。
さらに厚生経済学や費用便益原理のような経済学を利用した政策的発想の基礎である、余剰分析も丁寧に図表化している。最後は、公共政策の基礎に結び付けてもいる。
読者の多くは本書と、数日前に推薦したレヴィットのミクロ経済学の第一部の基礎概念、マンキューの入門経済学のやはり冒頭の数章のいずれかを代替的に選ぶことで、先に書いたように高校生、就学前の人にとっての最適な経済学入門の入門になるだろう。他の本はほぼ不用である。ぜひ大学で実際に経済学を教授しているプロの書いた経済書から初めてほしい。安易なわかりやすさは後々の理解の伸びを妨げるからだ。プロはその発展への接合に長けている。
ちなみに計量経済学もマクロ経済学もともに、ミクロ経済学のこの入門の入門的なテキストを選び読んでから勉強することをすすめたい。ミクロ経済学は経済学の基礎中の基礎でもあるからだ。
- 作者: 坂井豊貴
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: スティーヴンレヴィット,オースタングールズビー,チャドサイヴァーソン,安田洋祐,高遠裕子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2017/04/21
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- 作者: N.グレゴリーマンキュー,N.Gregory Mankiw,足立英之,石川城太,小川英治,地主敏樹,中馬宏之
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
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