浜田宏一作品集『平和の鳩』

 浜田宏一先生の作曲作品集の簡単な紹介と感想。

 1 メヌエット 浜田先生がネイバーフッド音楽学校の作曲コンテストにて入賞した作品(1988年)。三分の曲。2 童謡集「平和の鳩」。昭和20年の教科書に収録されていた詩(積極的平和主義の内容)に作曲したもの。前半の童謡集はなんと小学生時代の作曲。埼玉県熊谷の風土が曲のイメージの中に織り込まれている。「川土手」(小学校国語教科書)「すずらん」(北原白秋)「たぬきの腹づつみ」(小学校国語教科書)。最後の曲は中山晋平の影響が濃厚とのこと(浜田先生談)。北原白秋、野口雨情、当時の小学校教科書に記載されていた詩に浜田先生が曲をつけ(小学校時代)、その曲のイメージの背景には、当時先生が住んでいた熊谷や秩父の風景が織り込まれて詩情をふかめている。「あひるの小屋」(北原白秋)、「鬼ごっこ」、「月の夜」(野口雨情)。 「げんげ草」(北原白秋)は、奥様との結婚式のときにささげた歌曲。いくつかの作品の背景には、音楽好きになった契機ともなったお父上との思い出がある。この「げんげ草」も収録ヴァージョンの前に、父親の赴任先である熊谷の女学校を訪れた山田和男(雄)にみてもらっている。 「ねずみとお馬」(北原白秋)、「かんこどり」(北原白秋)、「三日月さん」(野口雨情)。浜田先生の野口雨情評「野口雨情には夢見るような抒情とヒューマニズムと共存している」とある。浜田先生のこの作品集の特徴そのものの形容ともいえる。秩父のどことない寂しさも表象。昭和32年、東大在学時に応援歌のコンクールで入選。これを機会に伊藤隆太氏に師事。「さくら」(西城八十)、「山」(北原白秋)、「梨」(北原白秋)はこの時期の作曲か。とても複雑な味わいに進化してる。最後の三曲は童謡集ではなく、「ヴァイオリンとピアノのためのファンタジー」「信州に行こう」そして東京大学応援歌「美しく夜は明けて」で結ばれる。やはり東大時代以降に技巧は飛躍的に進歩しているけど、その根底には埼玉秩父・熊谷地方の風土が反映している。

浜田宏一作品集「平和の鳩」

浜田宏一作品集「平和の鳩」