上念司『経済で読み解く大東亜戦争』

 上念さんから頂戴しました。ありがとうございます。副題に「ジオ・エコノミクス」とありますが、これは地政経済学のことで、「経済をひとつの手段として相手国をコントロールする戦略を研究する学問」とのことです。本書はこの視点から「愚かな決断、判断の誤りは気の迷いから生じ、気の迷いは経済的な困窮に誘発される」というテーマを扱います。具体的には19世紀後半から高度成長期までの長いスパンでの世界と日本との関係を再検討することになります。

 経済的困窮が短視眼的になりやすいという行動経済学的観点は重要です。それが政策判断や世論形成に生じることを検討することは有意義でしょう。上念さんとは歴史的用語などで必ずしも僕は見解は同じではないですが、本書はリフレ派的な経済観の多くを巧みに取り入れて、さながらリフレ派の経済学の再入門的な形になっています。付け加えるならリフレ派にはいわゆる左派的な松尾匡さんや、リベラルぽい(笑)僕や、保守系の上念さんまで政治的イデオロギー歴史観で差異がありますが、本書をよまれることで、「リフレってまっとうな共通の経済理解」であることを知っていただければいいと思います。

 しかしジオ・エコノミクス的観点はこれからますます注目されるでしょうね。その意味でも参考になります。

経済で読み解く大東亜戦争

経済で読み解く大東亜戦争