財務省の罠にはまってる日本経済(消費増税のインパクトなど財政緊縮を考える)

 21日の参議院選挙で自民・公明の与党は大勝した。これで焦点は、憲法改正問題やTPP、そして消費税増税問題など政策そのものに移るだろう。私見では、これらの問題を起点にして、自民党内での安倍下しの可能性がきわめて高いと思う。それは経済政策だけみれば、きわめて憂慮すべきことだと思う。

 以下のロイター通信の記事が紹介するテレビ朝日の番組をみていないので、ロイターのまとめが正しいのかよくわからないが(ロイター通信のマクロ経済関係は眉に何度もつばしてみるようにしている。時事通信ブルームバーグのマクロ経済関連も同様だ)、安倍首相が秋に消費税増税をどうするか慎重に判断するとしているらしい。

http://www.reuters.com/article/2013/07/21/us-japan-election-abe-tax-idUSBRE96K05U20130721?feedType=RSS&feedName=businessNews

おそらく秋の指標はこのままいくといい結果がでるだろう(少なくとも増税を否定し、法案を出すほどの決断を首相に促すほどの結果ではないだろう)。消費増税はこのままいくと、それを主導している財務省とその勢力の思いのままだ。残念なことだ。誰が日本経済をダメにしていこうとしているのかはっつきりとわかっているのに止められない。

しばしば指摘されているが、安倍首相が本気で消費増税をとめようとしても、党内基盤が弱く、麻生氏らのポスト安倍を狙う勢力によってその地位が危うくなる、また、消費増税を行ってしまい景気が減速しても同じ党内からの安倍おろしが起きる可能性がとりざたされている。

財務省も一枚岩ではないので、消費増税を認める反面で、そのマイナス効果を上回る公共事業や減税などを行い、「純」減税をねらうものがある。おそらく上の安倍おろしの可能性を排除するにはこの方策でいくのが(首相にとっては)現実的なのかもしれない。

本当に「消費増税ありき」という官僚的な硬直的な考えに政治や国民生活が完全にふりまわされていると思う。最近は増税しないと国際的な投資家たちの信認を失うというらしい。しかしイタリアでは増税をやめたら国債の利回りが低下したのだが…。そもそもこの問題で海外投資家がどんな立場に変更するのか、またその与える影響がどのようなものか、あまりに過大に評価されている。一種の増税勢力の「脅し」でしかないだろう。

さて以下では、上に書いたような政治的な懸念を念頭に、消費増税および来年度以降の財政緊縮の効果を、匿名の知人からご教示いただいた、消費増税以外の面をふくめてその経済へのマイナスの効果がどのくらいになるかを列挙する(教えていただいたそのものではない。一部修正している)。

(緊縮メニュー1)来年度の消費税引上げのインパクト 5%から8%をまず考える。
  「短期日本経済マクロ計量モデル(2011 年版)の構造と乗数分析」 佐久間 隆、増島 稔、前田 佐恵子、符川 公平、岩本 光一郎
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis259/e_dis259.pdf

によると、消費税1%増税で1年目-0.15%、2年目-0.35%の乗数となっている。これを三倍すると、2014年度、マイナス0.45%、2015年度マイナス1.05%。ただしモデルの性格上、二年目以降のショックは参考程度にしたほうがいい。いずれにせよ、実質GDPを来年度は0.45%程度引き下げるだろう。この推計は過小だという見方もあるだろう。例えば2010年の内閣府の試算だと上記のものよりも大きくなり、1年目にマイナス0.9%実質GDPを押し下げる効果がある。

(緊縮メニュー2)復興予算関係

復興フレームの見直し http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2013/f2.pdf
を参考にすると5年間の集中期間で計上されている復興増税が10兆円超。このうち復興特別会計の歳入をみると今年度含めてほぼ2兆円の増税済。来年度は個人住民税への復興増税などもあり“追加”増税額がどれくらになるかわからないが、14年度に(13年度に比較して)1兆円ほど追加増税額があり、乗数1とすれば実質GDPにマイナス0.2%ほど。

(緊縮メニュー3)補正予算の剥落

2012年度補正予算の効果の剥落。国の財政支出として10.3兆円程度、GDP比2%の規模

http://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2013/0111_01taisaku.pdf

上のリンクの最終ページ参照。

補正予算の成立時期が2012年度の遅くであったため、相当部分は2013年度に執行。2014年度に何も補正予算を行わない場合には、財政政策の規模がGDPに対しマイナス2%となる。乗数1だとマイナス2%の実質GDP減少。乗数は1以下の可能性もあるがよくはわからない。

緊縮メニューの1から3までで、実質GDPを2.5%超から最高で3%ほど押し下げる可能性がある(補正予算の剥落の乗数効果を1以下とすれが押し下げは2.5%よりも下回る)。

いずれにせよ、これらの押し下げ効果を上回る「純」減税効果を生み出す補正予算を編成するのだろう。増やして、また減らすというマッチポンプだ。増税論者のいう「国際投資家」はこのようなマッチポンプはみずに、消費増税の可否だけみているそうだ。かなり増税派に都合のいいことをする存在に思える(笑)。

ちなみに以上の試算は仮のものである。厳密なものとうけとらないでほしい。単純に増税が経済にマイナスのショックを与えるという当たり前なことを理解するだけでいい。