リフレ(リフレーション、reflation)は、現在の日本経済(だけでなく少なくとも欧米経済でも)の状況に適用されるべき経済政策である。私を含めて公然と「リフレ」ないしそれを主張する「リフレ派」が存在する。ただしネットの中の世界では、元祖リフレ派は自分だと名乗ったり、あるいはリフレに対する無責任な解釈が後を絶たない。
以下では、日本で最初に「リフレ」を述べ、また自らの政策の中心が、リフレであるという意味での「リフレ派」の元祖といっていい石橋湛山の発言を下に引用する。『石橋湛山全集』の索引をひもとけばわかるように、「リフレ」「リフレーション政策」という言葉を湛山が用い始めたのは1930年代初めの昭和恐慌期である。それ以降、自らの政策の中核を人間性の回復を不況の下で狙うこのリフレ政策として事あるごとに主張し、例えば悪性インフレ(ハイパーインフレーションなど)との違いを明白にしたり、その政策効果への公衆・政策当局者への誤解を積極的に正した。日本では湛山こそリフレ政策の明示的な主張者であり、以後も彼ほど歴史的にみても現実の政策に影響を与えた人物は現在に至るまで現われてはいない(それはそれでいまの日本を考えると不幸なことである)。湛山の主張は彼の同盟者、高橋亀吉らも賛同し「派」(=当時は新平価解禁論者とも当初はいわれた人々)として結集をみた。
以下の引用は数ある湛山のリフレに関する発言から比較的文脈がわかりやすいものを選んだ。
「云う所のリフレとは、かって米国のローズベルト大統領が、其の新通貨政策を始めるに当って宣言した如く「農業及び工業をして再び失業者に職を与える点まで物価の水準を引き上げ、又公私の債務は其の締結せられた当時の水準に略ぼ近い物価に於いて、其の支払いをなし得る如くなさんとする」ものである。即ち言い換えれば過去のデフレを訂正し経済界の活動発展を常態に回復するのに必要な程度まで通貨の供給を増加するのがリフレーションだ。従ってリフレ政策が行われれば、物価は騰貴するけれども、其の物価騰貴は、必ず之に伴って生産を増加し、全体としての国民の実質収入を、したがって其の生活程度を向上せひめる。昭和7年依頼の我が国の通貨膨張、物価騰貴が、一般に歓迎せられた通りの好結果を経済界に齎したのは、全くそれがこのリフレの線にそって行われたものであったからだ」(全集11巻、209頁、かな漢字は随時変更)。
- 作者: 石橋湛山,中村隆英
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 1995/11/01
- メディア: 単行本
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