古谷経衡『ネット右翼の逆襲』

 頂戴しました、ありがとうございます。

 まず本書は、

1 ネット右翼=秋葉的オタク×底辺層 のようなイメージが誤りであることを、自身のホームページでのアンケート調査から論破。
2 「保守」と「ネット右翼」をわけて考える人たち(アンケート調査での多数である自身を「保守」と考える人も多く含む)は、「ネット右翼」を「嫌韓」を中心としたレイシズム的な発言と等値している。しかし古谷さんによれば、そのような「保守」と「ネット右翼」を「嫌韓」で区別する二分法は疑問であるという。
3 「嫌韓」自体は、戦後の保守と区別されるべき、独自の思想的・政治的な文脈で、今日有意義であり、それはレイシズムではない。

という感じだろうか。率直にいって議論が粗い。無作為抽出を低評価し、自身のHPを見る人たちのバイアスに無頓着(というかむしろバイアスを肯定している)ところが1の問題点だろう。ただしそのアンケート調査の結果は大阪大学の同種の調査を比較できるので、読者は注意すればバランスのいい読書はできるだろう。

2と3だが、「嫌韓」というひとつの国、もしくは個々の組織や個人を対象にする好き嫌いをベースにした思想や政治的な戦略には率直にいって共感を抱けない。もし戦後保守が「好韓」をベースにしていても同じことがいえる。

本書はまた「嫌韓」の政治的・思想的な地位を高めるあまり、ネットでも日常的にみかける「在日だからだめだ」「韓国だから嫌いだ」的な発言(これをレイシズム的以外のなににたとえればいいのだろうか??)という発言や行動のもたらす問題性があやふやに本書ではなっていると思う。

ネット右翼の逆襲--「嫌韓」思想と新保守論

ネット右翼の逆襲--「嫌韓」思想と新保守論