ディヴィド・オレル(望月衛訳)『経済学とおともだちになろう』

 経済学をかなりシニカルにそして相対的にみているオレルの構想した経済思想史です。古代社会から現代まで、いまの正統派経済学(本書では新古典派的な流れ)もひとつの経済観としてみなし、学派の競合を綺麗に整理して、代替的な学説もかなり万遍なくフォローしています。そもそもアダム・スミス以前の「経済学」はかなり多層的であり、潤沢な知性の宝庫なのです。本書もスミス登場までなんと紙数の三分の一近くを割いているところが新しく、またさきほど指摘したオレルの相対主義的な姿勢が鮮明といえるでしょう。

 取り上げられている経済事件や経済思想家(経済学者とは括れません)はぼくからみるとなかなか凝った選択だといえるでしょう。もちろんこれ一冊で経済学のすべてはわかりませんが、楽しい副読本としては手元においておき、暇な時間に読まれることをすすめます。しかしコペルニクスの経済観が出たときはやられた、と思いました(笑。

経済学とおともだちになろう

経済学とおともだちになろう