ちょっと前に頂戴しました。ありがとうございます。この本は日本ではあまりない病院、お医者さんの行動を扱った非常に重要な研究です。
内容は豊富なのですが、ここでは「命の価値」に関わる部分を紹介します。
本書は、日本のお医者さんに医療費の配分についてのアンケート調査を実施しています。命を救える新治療方法が利用できるが、予算が限られいて全員の患者さんにその治療をうけさすことはできない。この治療を受けなければ余命3か月。この医療費配分をどのような要因を重視して決めるかというものです。
各項目を非常に重要、重要、それほど重要ではない、全く重要ではないとウェイトづけをしてもらい、1)健康な生活習慣、2)所得階層、3)年齢、4)治療後の平均余命、5)治療後の健康状態(Quality of Life=QOL)、6)いままでの治療歴 についてお医者さんたちに判断を聞いています。
海外でも同じ調査が行われていてその結果との比較が提示されています。また日本では開業医と勤務医にわけても聞いています。さらに医師のもつ選好の在り方をあぶりだすために、さまざまな水準の患者の属性を組み合わせて提示し、その調査結果から、日本のお医者さんの医療費配分の嗜好(好み)を読み取っています。
例えば日本では全体として海外に比べて「延命」重視の傾向が強い。
また開業医の方が勤務医に比べてはるかに患者の所得階層を意識している。
勤務医の方が開業医に比べてQOLを重視している
など興味深い結果を導きだしています。
例えばこのことは、尊厳死法案の医師たちの判断を考える時にも重要な示唆を与えています。医師はすべて同質同形の選好の体系をもっていないということです。
本書のアンケートでも全員は助からない(医療費に限りがあるという想定なので)。つまりこのアンケートでも限定された条件ではあるが、「生」と「死」の決定を行うことになっています。医師が国の違いや勤務形態で異なる判断をすることの含意は重いのではないでしょうか?
- 作者: 森剛志,後藤励
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/06/08
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る