若田部昌澄「日銀の失政は明らか」(『Voice』2月号)

 『Voice』2月号頂戴しました、ありがとうございます。本号は、オバマ政権への期待みなぎりまくるクルーグマンのインタビュー、上野泰也さんの連載、暗黒卿の僕は関心がない道州制山形浩生さんのタバコ文化論などがあるけれども、とりあえず若田部さんの論説が個人的に重要。

 ここでは日本銀行の政策の失敗(06年からの利上げ路線が招いた景気失速、デフレ脱却の事実上の放置)を指摘しています。そしてミルトン・フリードマンらの『合衆国貨幣史』をとりあげて、若田部さんは以下のように書いています。

 「この本の白眉である大恐慌には、当初ふつうの不況として始まったものが世界的な恐慌へと激化していく過程が詳細に語られている。彼らによるとその大きな原因は政策の失敗。なかでも当時の連邦準備制度理事会FRB)の失敗にある」

 としてFRBの政策の失敗とは、金融機関の倒産が相次ぐ危機的な状況に「最後の貸し手」として適切に行動しなかったこと、2)人々の現金保有への選好が急増していたことに対抗して、マネタリーベースを増加させなかったこと、この二点で誤っていた、とするものでした。

 コメント:この若田部さんが紹介された、後者の議論はいまの日本でも重要でしょう。人々の安全志向が高まり、現金・預貯金への資産選好が加速していることは、今朝も報道がありました。このような安全資産への公衆の過度な傾斜を防ぐためにも、日本銀行が貨幣をより市場に供給することで、人々の過度な安全志向を防ぐ必要があります。そのために貨幣の価値を低下させる(=貨幣の供給量を増やす)ことが必要となってくるのです(まあ、厳密にはマネタリーベースと貨幣供給量はもちろん違いますが発想的にはこんなものでいいでしょう)。