高橋洋一『大阪維新の真相』

 現在、橋下徹大阪市長の間近で彼を見ているという高橋洋一さんの最新刊。『正論』の総理大臣に望ましい人物として高橋さんは橋下氏を推薦していることからもわかるように、橋下氏の「改革」に期待し、事実上のブレーンによるわかりやすい「大阪維新」の解説になっている。僕もいままでさんざん、メディアやネットでの断片的もしくは好き嫌いの次元レベルの発言を見聞してきただけに、本書はいまのところまとめて読むに値するただひとつの大阪維新・橋下本といっていいだろう。例外としては、大阪の公務員組合との確執とその問題点を描いた『POSSE』の熊沢誠論説だけである。

 内容をいくつか箇条書きしてみる。

1 大阪都構想は単なる都市改革ではなく「道州制」につながる。道州制基礎自治体ー道州―国)が効率的にマネジメントできる単位。基礎自治体がほとんどの仕事を行い、そのあまりを道州、さらにあまりを国がやるという形で「小さな政府」構想に結び付く。財源も地方に委譲し、地域が地域のことを決定する仕組みを目指す。

2 「財政再建のための増税」はダメな意見の典型。経済成長こそが財政再建に役立つ。地方交付税を廃止すれば地方は自前で財源を考えなくてはいけなくなり活力を増す。道州制の首長の腕前で、その道州の雇用、また公務員の規模なども決まる。消費税は地方の財源に。理由は安定的。欧州は国に消費税を割り当ててるという批判に対しては、欧州の各国の規模が道州レベルであり、規模から考えたらその批判はあたらないと反論。またガソリン税も道州へ。

3 大阪市生活保護の不正受給問題。これは国レベルでは小さいウェイトだが、大阪市ではやはり深刻な問題。職員の徴収の意識を高め、脱税と滞納をまとめてチェックすることも重要(大阪版の歳入庁)。大阪市の不正受給対策(現物支給、期限設定など)の試行錯誤への評価。ただし日本全体の生活保護受給者増についてはデフレ脱却を提唱。

4 ベーシックインカム導入の提言。高橋さんのこの章は、ベーシックインカム負の所得税、給付付き税額控除などが入り乱れて多少まとまりが悪い。財源問題については、既存の社会保障費100兆円のうち医療費30兆円を除く70兆を財源にすれば、年金分含む月額5万円を全国民にベーシックインカムとして実現できると試算。

5 官僚の骨抜きにご注意。「事前になんとかの了承(許可)」とか「政令で定めるところ」などの表現にご注意。

教育、文化、府知事時代の評価なども具体的な事例と数字をあげて書かれていて興味深い。

本書はちょっと書き方に粗い点もあるのだが、冒頭に書いたように大阪維新を知る最初のステップとしては最もいい本だろう。

そして、一番の参考資料はどう考えても大阪市のホームページである。ここにおおくの政策の情報ができるかぎり開示されているしされていくだろう、というのが情報公開にこだわる橋下氏の手法と考えていい。

http://www.city.osaka.lg.jp/

オープン市役所のこころみ
http://www.city.osaka.lg.jp/shisei_top/category/2055-0-0-0-0.html

大阪維新の真相

大阪維新の真相