デレック・ボック『幸福の研究』

 幸福研究の展望的な書籍ですね。「ハーバード元学長」というところが宣伝のアクセントかもしれません。これは原書ではない副題で、日本的な書籍購読の風土を表しているんでしょう。

 冒頭では、ブータンの幸福度の高さとその背景がわりと詳細にかかれていたり、ネパール系住民の迫害という負の側面にも言及されていますが、全体的にブータンの政策に好意的です。それが本書の基調をなしていると思います。

 全般的に、政府の役割の重視とその質の改善が強調され、それが人々の幸福にどのように貢献するのか、個々の事例に即して書かれています。ただ全体を読んでみて、政策の失敗への注目をそらすために、いまの悲惨な状況を幸福とたとえてみよう(ポストモダンの先頭にたつ日本とかw)、という話があふれる日本では、とりあえず定常状態という『神話」を打ち破ることが先決ではないか、と思いをあらたにしました。

幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会

幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会