ナシーム・ニコラス・タレブ『強さと脆さ』

11月末に出る予定の『ブラックスワン』の続編ともいえる著作を一足早く版元から見本を見せていただいた。ありがとうございます。しかし同時に見本二冊、本物二冊と計四冊も送っていただいたルビーニの『大いなる不安定』が面白そうなのに対して、残念ながら僕はタレブの『ブラックスワン』は読むに耐えない退屈な本だと思った(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090615#p3)。『ブラックスワン』よりも『まぐれ』の方が面白いといまでも思っている。

この小冊子といっていい『ブラックスワン』の続編ともいうべき本には、副題に「ブラック・スワンにどう備えるか」とあるんだが(実際に店頭にでるときとは違うかもしれない以下すべてそう)その対処法と、また前作に寄せられた意見への注釈・反論からなる。

冒頭はタレブがいかに前作で国際的著名人となり、またいろんな知的セレブと知り合いになりましためでたしめでたし。だからおまえらにもその交友でますます磨かれたわしの「品のある話」の一部を授けよう、畏み畏み……という感じ。皮肉でもなんでもなくそんな感じだ。

前作が退屈だったので内容も覚えてないが、本書にある次の文句を数百ページに水増ししただけのものだったように思う。

「ではもう一度最初から。黒い白鳥とは大きな影響を及ぼす認識の限界であり、心理(思い上がりやバイアス)と哲学(数学)の両面における、個人と集団両方の知識の限界である。「大きな影響を及ぼす」というのは、大事なのは衝撃の大きい稀な事象であり、私たちの知識は、経験的にも理論的にも、そうした事象に出くわすと、使い物にならなくなるからだ。大きな影響とはそういうことだ」

簡単にいうとわからないものがある、わからないものにでくわすとわからなくなる 以上終わり。あとは数学と哲学のごたくと経済学は下品で使い物にならない、投資家って俺以外はそんなに頭よくないしそのわりにはおカネもらいすぎてるよね、君らは僕の言っている黒い白鳥回避のモラル集でも有り難くよんでなさいな。

それだけのつまらない本である。

強さと脆さ

強さと脆さ