今年読んだ経済本ベスト10

 さてここ半月なんだか忙しくてブログは手抜き状態か、マンガに偏ってましたw。すみません。さて今年もいろんな経済書を読んできました。以下、順不同でどんなものが心に残ったのか(ただし第1位だけは本当の一位!)、一言コメントとともに思い出していきましょう。『ブラックスワン』もいいかもしれませんが、以下のをまとめて読んだ方がちゃんとした経済問題への体系的な見方ができますよ。その方が皆が読んでるベストセラーを読むよりもきっと自分を他人とは違う存在にしてくれるでしょう(う、なんか勝間さんみたいな書き方にw

第10位 高橋洋一竹内薫鳩山由紀夫の政治を科学する』

まだ登場したばかりのこの本ですが、高橋さんの完全復帰を印象づける読んでためになる経済合理性からみた日本の政治制度の辛辣な分析ですね。鳩山政権発足100日を再考する上でも必読です。

第9位 竹内薫『バカヤロー経済学』

個人的に竹内さんには感謝したいと思います。文中の「先生」がこの論壇にいるといないとは大違いですから。こちらは経済政策をやはり辛辣に徹底検証。両方ともむしろネットのノリに近いでしょうね。

バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)

バカヤロー経済学 (晋遊舎新書 5)

第8位 安達誠司『恐慌脱出』

どうやら今回の世界金融危機大恐慌の再来を避けることだけはほぼ達成できたのではないかと思いますが、それでも日本病=日本の10数年の長期不況に陥る可能性は欧米ともにまだ課題として重くのしかかっているでしょう。ましてや日本はそのど真ん中を徘徊しています。本書はその長期停滞再来のリスクを厳しく分析しています。

恐慌脱出―危機克服は歴史に学べ

恐慌脱出―危機克服は歴史に学べ

第7位 岩田規久男金融危機の経済学』

今回の世界金融危機をミクロ的な資本市場の側面から詳細に解説した本書は今年の僕の授業のアンチョコ第一位でした。バランスのいい目配りと明瞭な解説は岩田先生ならではです。今後の金融規制を考える上でもぜひ読んでください。

金融危機の経済学

金融危機の経済学

第6位 原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』

このままいくと拙著『偏差値40から良い会社に入る方法』と並んで、今年の人気本第1、2位になるであろう原田さんらしい常識をやぶる好エッセイです。原田泰さんについてたぶん本人に次いで原田さんの本を読んでいる僕からするとまさに原田濃縮還元120%本です。

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

第5位 若田部昌澄『危機の経済政策』

10月のはじめから期間を延長して12月中旬まで行われたブックファースト新宿で、最も読者の熱い支持を集めたのが、この若田部さんの本でした。過去の代表的な経済危機とその政策の失敗、政策担当者の思想とエコノミストたちの当時と現在の最先端の経済学が、非常に明快に論じられています。ぜひ手元に置き、経済学の知識の泉として今後も読まれるべき本です。

危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか

危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか

第4位 アカロフ&シラー『アニマルスピリット』

人間の非合理性(貨幣錯覚など)がマクロ経済の不安定性をもたらす、という観点からの現時点における最もわかりやすい解説書・啓もう書です。この議論をちゃんとフォーマルに理解していくことがこれからの経済への理解に欠かせないものになるのだと思います。何度読んでも味のある名著でしょう。

アニマルスピリット

アニマルスピリット

第3位 クルーグマン『危機突破の経済学』

クルーグマンはインタゲを捨てた、などと日本のネットのアホがふたり叫んでましたが、そういう愚かさの危機を突破することが可能になればどんなにいいでしょうかw。いや、今回の世界同時危機、そして日本のより深い混迷もその種の阿呆の危機であったとも本書は教えているのかもしれません。

危機突破の経済学 (Voice select)

危機突破の経済学 (Voice select)

第2位 田中秀臣『偏差値40から良い会社に入る方法』

拙著もいれてやってください。『エコノミストミシュラン』もそうだったのですが、本人が自分の専門や著作の流れと少し違うな、と思った作品ほど思い出に残るものになるのかもしれません。雇用三部作の最後ともいえる「自伝」は来年前半には皆さんのお手元に届くでしょう。

偏差値40から良い会社に入る方法

偏差値40から良い会社に入る方法

第1位 岩田規久男日本銀行は信用できるか』

今年は岩田先生の著作群は驚異的なものがありました。その中で本書はまさに今日の日本の長期停滞の元凶を正確にその題名が名指ししているものです。まだ読まれていない方はぜひこの機会に読んでください。日本銀行が経済問題以上に、政治的問題であることがこれほどはっきりと書かれたものはありませんでした。その意味で順不同と書きましたが、この本だけは例外で、まさに僕の今年度の一位が岩田先生の本です。僕もこれから長い時間をかけて岩田先生のような切れ味に研さんを重ねて進めたらとクリスマスの夜ぐらい妄想を自分にプレゼントしたいと思います。

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)