2012年に出版された経済書で心に残るベスト3 発表!

 明けましておめでとうございます。今年もこのブログEconomics Lovers Liveを御贔屓のほどよろしくお願いいたします。日本がデフレを完全に脱却してリフレーション過程に入るかどうか、そのまさに瀬戸際といいますか、希望と不安の感情といいますか、いままでにない新年を迎えています。このブログではなるべくその時々の経済問題を現実的な視点を意識してとりあげていきたいと思います。

 さて新年最初のエントリーは、Twitterで呼びかけさせていただきました、「#2012年に出版された経済書で心に残るベスト3 」の結果を発表させていただきます。有効投票者数は100人以上の方になりました。またRT数は数限りなしです。集計の仕方は順位をつけていただいたものに、1位に3点、2位に2点、1位に1点とし、同位になった場合は半数ずつを、またご希望により順位外のものにもそれぞれ0.5点をつけて集計しました。また特に順位の明記のないものは、私の方で適宜判断して採点させていただいてます。本当にみなさんのご協力感謝いたします。『エコノミスト』や『ダイヤモンド』などの経済書ランキングに勝るとも劣らぬものができました。

では、さっそく第一位の発表からです!

2012年に出版された経済書で最も心に残った作品は!

ポール・クルーグマン山形浩生訳)『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房

です! おめでとうございます。総投票点数83.5でした。大接戦を制しての第一位です。訳者の山形浩生さんから読者の方々へのメッセージを頂戴していますのでご紹介いたします。

山形浩生さんのメッセージ

辺境(といっても日本だけ)のリフレ派周辺のみならず、世間一般にもこの本が受け入れられたうえ、日本の政策的にも本書の中身に近い動きがやっと出てきたのは感慨深いものがあります。オバマ政権継続を受けて本書の改訂版が近々出る話もあるとか。2013年も一つよろしく!

クルーグマンさん、山形さん、そして版元のご担当の皆さん、そして読者と投票していただいた方々おめでとうございました!

さっさと不況を終わらせろ

さっさと不況を終わらせろ

さて続いて、第二位です。第一位のクルーグマンさんの本と最後の最後までデットヒートを繰り広げました。昨年の日本オリジナルの経済書としては第一位ということになります。

第二位は、

片岡剛士『円のゆくえを問いなおす』(ちくま新書筑摩書房
でした! 総投票点数は、78でした。なんと第一位とは5.5差でした! ちなみに一位の獲得数はクルーグマンさんの本が13人、片岡さんの本は19人でした。
片岡剛士さんからもメッセージを頂戴しておりますのでご紹介します。

片岡剛士さんのメッセージ

たくさんの方に拙著を取り上げていただき、誠にありがとうございました!

片岡さん、版元の担当のみなさん、そして投票いただいた読者のみなさん、おめでとうございました。

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)

さて続いてベスト3の最後をご紹介します。激戦を制して第三位に入ったのは、

安達誠司円高の正体』(光文社新書、光文社)

でした! 投票点数は41.5でした。安達さんおめでとうございます。安達さんからもメッセージを頂戴しています。

安達誠司さんのメッセージ

拙著「円高の正体」を今年のベスト書籍の一つにお選びいただきありがとうございます。安倍政権成立直前の円安進行で私、及びリフレ派の主張が正しかったことが証明されたのではないかと思います。ただし、安倍内閣の経済政策に関しては危ないところもありますのでその辺について指摘させていただく機会を作りたいと思いますのでその節はよろしくお願いいたします。あと、最近、ゾンビのように再びでてきた藻谷バスターもやりたいと思います。

円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)

では続けて第四位以下を発表させていただきます。

第四位 若田部昌澄&栗原裕一郎『本当の経済の話をしよう』(ちくま新書筑摩書房
投票総数は39点でした。著者のお二人からメッセージを頂戴しております。ありがとうございます。

栗原裕一郎さんのメッセージ


経済学初心者が、毎月2回の講義を受け、あげられてくる参考文献を精読理解した上で、毎回原稿用紙で20〜30枚のレポートを提出。みたいな作業を1年間続けた成果がこの本です。正直こんなにきつい勉強は生まれてこの方したことがありませんでしたが(笑)、それでこそリアルな入門書になるはずだ!という確信を評価していただけたようでうれしいです。ありがとうございます。若田部先生、不肖の生徒のご指導ありがとうございました。「続編を」という声がリアルとネット双方から、ちらほら、というにはけっこう聞こえてくるのですけれど、どうしましょうか(笑)。


若田部昌澄さんのメッセージ


「心に残る」という評価をいただけたことはまことにありがたいことです。今年は、山形浩生さんは相変わらずいつ寝ているのかと思うほど良書を立て続けに翻訳しましたし、新書の世界に参戦した安達誠司さんは為替関係で2冊、岩田規久男先生は相変わらず日銀批判に健筆をふるい、片岡剛士さんは他を圧する重厚な一冊を、飯田泰之さんはいつもながら手際の良い仕事をされました。それだけでなく、年末にはなんと浜田宏一先生までが参戦してベストセラーに。こういう強豪とならんで本書が「心に残る」ものになったとしたら、栗原さんのおかげが大きいといわざるをえないでしょう。構想から刊行にいたるまでの、特に栗原さんが経験した紆余曲折を思うと、本当に感慨深いものがあります。さて「続編」について。これまた難題を。結局はリソースの確保、スポンサー次第でしょうか(笑)。しかし、その前に正式に本の打ち上げをしましょうね。

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

本当の経済の話をしよう (ちくま新書)

そしてつづいて大御所の新刊がランクインです

第5位 浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社
投票後半から猛烈な勢いで順位をあげてきました。投票点数は、36点。浜田先生は内閣府の参与になられました。まだ12月に出版されたばかりです。

アメリカは日本経済の復活を知っている

アメリカは日本経済の復活を知っている

第六位 岩田規久男日本銀行 デフレの番人』(日経プレミアシリーズ、日本経済新聞社
総投票点数29.5点でした。岩田先生おめでとうございます。岩田先生は今年の三月で学習院大学を退官されます。長きにわたる学生のご指導また日本銀行問題などの政策問題での国民への啓蒙活動など本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)

第七位 麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣『日本建替論』(藤原書店)

総投票点数22.5点でした。拙著でもあります。どうもありがとうございました! 
筆者のひとり麻木久仁子さんからメッセージを頂戴しています。どうもありがとうございます!

麻木久仁子さんのメッセージ


『日本建替論』、多くの皆様方にお手にとっていただき、大変嬉しいです。ありがとうございます。田村さんはお髭がダンディ、田中さんはお鉢がセクシー!お二人ともステキな殿方です。が、何より素晴らしいのは「人々の日々の暮らしが安定した穏やかなものになるためにどうすればよいのか」という熱い思いをお二人が共有していること。金融・財政政策というと数字が飛び交い、ともすれば「暮らし」を忘れたものになりがちですが、お二人なら大丈夫!
この本、今後もさらに多くの方のお手元に届きますようにと願っております。

日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕

日本建替論 〔100兆円の余剰資金を動員せよ!〕

第八位 若田部昌澄『もうダマされないための経済学講義』(光文社新書、光文社)
総投票点数は19.5点でした。若田部さんは第4位の『本当の』をいれてベスト10に二冊ランクインです。おめでとうございます。

もうダマされないための経済学講義 (光文社新書)

もうダマされないための経済学講義 (光文社新書)

同じく第八位 ヨラム・バウマン(山形浩生訳)『この世で一番おもしろいマクロ経済学』(ダイヤモンド社

総投票点数は19.5点でした。おめでとうございます。相方のミクロ経済学は2,011年の刊行ですので対象外でしたが数票入っておりました。人気のほどがうかがえます。

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

さてベスト10の最後は。
第十位 安達誠司『ユーロの正体』(幻冬社新書、幻冬社
安達さんも同書はまだでて半月ほどですが堂々のベスト10いり、また安達さんも若田部さん同様に、二冊もランクインです。得票点数は17点でした。おめでとうございます。

ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める (幻冬舎新書)

ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める (幻冬舎新書)

さて以下、11位から20位までをご紹介させていただきます。

第11位 アビジット・V・バナジー &エスター・デュフロ (山形浩生訳)『貧乏人の経済学』(みすず書房

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

第12位 飯田泰之『飯田のミクロ』(光文社新書

飯田泰之さんからもメッセージを頂戴しています。
飯田泰之さんのメッセージ

うぉう♪『飯田のミクロ』言及ありがとうございます.かなりベタな本なのですが,かえって最近では珍しいのではないかと思っております.確かに新たな「経済学入門者」を増やす本も大切だとは思いますが,時に話題を絞って深掘りする本も必要なのではないかと思います.

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)

第13位 ジョセフ・E・スティグリッツ(楡井浩一 峯村利哉訳)『世界の99%を貧困にする経済』(徳間書店
世界の99%を貧困にする経済

世界の99%を貧困にする経済

第14位 ジョセフ・ヒース (栗原 百代訳) 『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版
資本主義が嫌いな人のための経済学

資本主義が嫌いな人のための経済学

第14位 倉山満『検証 財務省近現代史 政治との闘い150年を読む』(光文社新書、光文社)

倉山満さんからメッセージを頂戴しました。ありがとうございます!
倉山満さんのメッセージ

お選びいただきありがとうございます。
安倍首相が伊勢の神宮で年始にデフレ脱却を祈願する御時世となりました。
今年は、伊勢と出雲と熊野で遷宮が重なる奇跡の年。
新年をより良き年にするために、私が言いたいことはただひとつ。
白川を討て!

検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)

検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)

第16位 原田泰『震災復興 欺瞞の構図 』(新潮新書、新潮社)

原田泰先生からも長文のメッセージを頂戴しました。ありがとございます。
原田泰先生のメッセージ

第16位に選出していただいてありがとうございます。『震災復興 欺瞞の構図』のメッセージは単純で、以下のようなものです。
 
東日本大震災で被災した人々を直接助ければ、せいぜい6兆円で済む。ところが、関係のないことをすれば19兆円でも足りない。人々と直接助ける、すなわち住宅や漁船の頭金を援助し、仮設の漁港をすぐさま整備すれば、人々は自立し、政治には依存しない。しかし、それでは政治はつまらない。
 一方、エコタウンのような割高なエネルギーを用いる町を作れば、人々はいつまでも補助金を求める。要するに、人々は政治に依存するようになる。
 人々を政治に依存させれば、政府支出が増大し、いくら増税しても財政再建などできるはずはない。大震災という異常事態だからこそ、人々の自立を助ける政治を行わなければ日本という国が危うくなる。
 
 ごく少数の方には評価されましたが、広範な評価を得るには至りませんでした。残念ながら日本は、人々を依存させる政治の方向に向かっているようです。無力を感じることが多いのですが、何百という経済書が発刊されている中で16位となったことに力をいただきました。ありがとうございました。

震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)

震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)

第17位 岩田規久男『インフレとデフレ』(講談社学術文庫講談社
インフレとデフレ (講談社学術文庫)

インフレとデフレ (講談社学術文庫)

第18位 猪木武徳『経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み』(中公新書中央公論新社第19位 田中秀臣・上念司『「復興増税」亡国論』(宝島新書、宝島社)

上念司さんと僕との共著です。どうもありがとうございました。
上念司さんのメッセージをご紹介します。

あけましておめでとうございます。
最近、予言者としても覚醒しつつある(?)私ですが、この本は予言の書としてもかなりの評価を受けた記念碑的対談ですw
もし民主党政権が続いていたら、この本に書いた悪魔のシナリオが実現してこの国が滅んでしまったかもしれません。何とか年末の選挙で踏みとどまりましたが、依然日銀法改正、増税回避といった難問は山積です。
安倍内閣が犬養内閣2.0として本格的に指導するかどうか、みんなで見守っていきましょう!今後ともよろしくお願いします。

「復興増税」亡国論 (宝島社新書)

「復興増税」亡国論 (宝島社新書)

第20位 柴山桂太『静かなる大恐慌』(集英社新書集英社
静かなる大恐慌 (集英社新書)

静かなる大恐慌 (集英社新書)

第20位 イツァーク・ギルボア(川越 敏司 佐々木 俊一郎訳)『意思決定理論入門』(NTT出版
意思決定理論入門

意思決定理論入門

以上でした。どうもご協力ありがとうございました! 
今年一年が皆様にとっていい年でありますように。