若田部昌澄「危ない与謝野発言」(『Voice』8月号)

 危ない与謝野発言とは何のことなのか、真剣にどの発言なのか一瞬わからなかった(冗談じゃなくまじめなレベルで)。そうか「ここが底」発言か。業界エコノミストのかなりの人数、そして政策当局者とその僕たるマスコミの方々の多くは、今日も「ここが底」で「景気悪化が緩和した」というメッセージを忙しく発信中である。あまりに発信するので与謝野発言を忘れてしまっていた 苦笑。

 さて出口政策を慎重に行うべきであることは、クリスティナ・ローマー氏のここでの発言にあるように、単に長期金利の上昇だけをみて「出口戦略」を実行すべきではないことはわかるだろう。長期金利の上昇するケースを、若田部さんはいいケース(将来の成長期待の高まりを反映してのインフレ)、わるいケース(財政悪化による国債のリスクプレミアムの上昇)を区別して、アメリカも(そしてアメリカ以上に)日本は、今般の長期金利の上昇であわてて出口戦略をとることは、わざわざ大不況脱出を困難にしてしまう、と警告しています。