大学卒就職の話題

 いわゆる「就職コア層」といわれる旧帝大早慶クラス私大のさらにその一部分の学生たちがすでに内定を得て、いまは非コア層の就職活動が勢いを増している。非コア層どっぷりといえる私の大学の学生たちもこの気候不順な中、就職活動と(多くの学生はゼミと1、2科目程度だが)学業に励んでいる。正直、例年になく就職への関心が高いように思える。

 ところで正確な数字は出さないでおくが、2010年度卒の内定調査を行ったが、これが昨年比でもそんなに悪くないようにに私には思えた。ひとつには学生たちが不況を懸念してかなり例年よりも早く就職活動を行っていたことにもあるが、本当の要因は違うところにあるような気がする。これは僕個人の推測でしかないが(非コア層該当の他大学も似たりよったりと考えてみて)、不況の深化に伴って大手企業志向が強まり、大手企業が買い手市場化をより一層強める一方で*1、非大手企業は採用数の低下はあるものの、現状としては「売り手市場」のままであることが大きいようである。

 例えばこの記事http://markezine.jp/article/detail/6805では、大手企業が買い手市場の色彩を強めていることがわかる。またリクルートワークス研究所が出した資料(ワークス大卒求人倍率調査2010年卒)をみると、従業員規模別では、1000人以上の企業への求人倍率は0.55倍(前年度は0.77倍)であり、これは大企業を好む学生が増加する一方で、大企業の採用数が減少したことによる。この事実はディスコの調査とも一致している。

 他方で1000人未満の規模の企業では、前年の4.26倍から3.63倍に低下したものの依然として「売り手市場」のままである。この事実は非コア層の学生たちの行動特性とあわせて考えると、先の内定調査がこの不況下にあってそれほど悪くないことのベースにあるような気がする。

 この非コア層の学生たちの行動特性とは、例えば『就活のバカヤロー」でも書かれているし、おそらく多くの大学教員の実感レベルでもあるだろうが、非コア層の大学生たちは、自己選抜として大手企業よりも非大手企業を選択する傾向が非常に強い、ということだ。

 おそらく大企業への就職希望の増加は、不況を背景にしての大企業志向の反映であろう。大手企業の採用数の減少とあわせて、いわば大手企業の椅子取りゲームが激化しているということである。不況色を反映して非コア層学生の中でも大企業志向をもつ学生が増えたり、コア層でもより大手企業志向が強まっているのかもしれない。

 他方で非大手企業はいま書いたようにまだ余裕のある(?)「売り手市場」のままである。求人倍率は落ちが、学生たちの大企業志向が不況のために強まったため、求人数の低下による求人倍率の低下効果を、就職希望者の減少効果がうまく歯止めしているため、それほどの求人倍率の低下を招いていない。僕の本務校の学生たちは不況が強まったからといって大手企業に一部志望がスイッチしたとはいえない。従来のように関心の主たる対象はおそらく非大手企業のままだろう。そのため非大手企業の求人率がそれほど落ち込んでいないこと+大企業にスイッチしていない、というふたつの要因から、昨年と比べても内定調査が悪いとはいえない、という結果になっているように思える。

 ところで、もちろん従業員の多寡がそのまま優秀企業でも働きやすい企業というわけでもない。非大手企業でも働きやすい企業は多くある。不況の深化は新卒市場でも深刻な影を落としてはいるが、まだまだ非コア層の学生たちにも、優良で、働きやすい会社を選択する余地がかなりあることを示している。問題はそのような企業をどう見つけ出し、学生がどう積極的に動いてくれるかなのだが。

*1:もともと大企業は買「買い手市場」=求人倍率は1を下回るようだが、ここ数年はかなり「売り手化」の傾向を強めていた