フェリーペ・スミス『ピポチュー』

 id:ceenaさんからご恵贈いただきました(いや、正確にいうとまだだけど 笑)。『マンガ論争勃発2』もそうですが本を頂く前に興味のあるものは(もらえるかもなあ〜と思うものでも)ついつい買ってしまう出版社にとってはありがたい存在の田中です*1


 さすがに身銭を切っただけあり(?)これはかなり面白いと思うよ。同じ作者の『MBQ』は好みとズレるんだけどこちらは、集団劇として楽しめる。この1巻と雑誌『モーニング・ツー』の方の最新の連載分しか読んでないんだけど、並行するいくつかのエピソードが有機的に結合して読みやすい。登場人物たちの役割がすっきりしているのもいい。狂気(日米のアンダーワールド)と凡庸(両方とも見かけはさえてても中味がどこな空虚な美男美女w)というふたつの世界を、ちょうど日本アニメが大好きなオタクの少年とその理解者?の少女が狂言回しとしてつないでいき、やがて爆発的にクロスしていく予感がある。異なる世界がまじりあうのは、暴力か、文化か、愛の三種類しかないのだ、とでもいいたい作者のパワーあふれるメッセージはわかりやすいだろう。


 『MBQ」ではあの第一巻だけだと各ストーリーがばらばらで、どこに物語の重心があるのか読めなかったんだけどこちらの方は理解可能。たぶんかなり物語構築で習熟していっている感じ。また余談だけど、同じ著者といえ他社製品(ソフトバンククリェイティブの『MBQ』)の宣伝があるのが斬新 笑。 ceenaさんの訳語はこなれいて読みやすい。


 好みとしては、男性目線的な欲望を具現したレイコの造形と内面の屈折が面白いと思うなあ。レイコの絵は下で著者がせっせと書いているのでご参照までに 

http://pds.exblog.jp/pds/1/200902/21/65/c0048265_16471938.jpg

PEEPO CHOO ピポチュー 1 (モーニング KC)

PEEPO CHOO ピポチュー 1 (モーニング KC)

*1:最近では岩田先生の『世界同時不況』、原田さんたちの『世界経済同時危機」がなぜか二冊づつありますです