もうなんといっていいやらお手上げ


 不幸にもまた目撃したあるブログでの話だが、原田さんたちの新刊『世界経済同時危機―グローバル不況の実態と行方』の内容が間違って紹介されていた。


 世界経済同時危機の背景には、新興国や日本とかの過剰貯蓄を、米国が吸収したというグローバル・インバランスの存在がある(とそのブログでは書いてあるが)、なんてことは原田さんの主張には基本的に関係ない。むしろグローバル・インバランスが危機の原因の説明としては正しくない、というのが原田さんの主張であり、まさにまったく正反対!


 原田さんたちの本では、危機の原因は、主に1)過大な金融緩和と急激な引締め、2)格付けのインセンティブが歪んでいたこと(=サブプライムローン証券のリスク管理の甘さ)、3)さらに規制が不適切だったこと(SIVの問題、自己資本比率規制の問題など)をとりあげている。「影」だかなんだかしらないが、そのブログのへんなレトリックの巻き添えにすべきではない。


 さらに日本が内需主導に転換するには云々の文脈に、公務員改革の話はまったく関係なし! それは長期的な効率化の話としてでてきたのであり、当面のこの不況への対応(つまり内需主導への転換)には直接関係ない。内需を増加させるのは、原田ら本では緩和政策。さらに本格的な回復にはアメリカの回復が必要である、というのが原田本の結論なのである。


 そして清算主義的な立場をとる人たちと、原田さんそして僕もそうだがの立場との開きはかな〜〜りあり、その対立こそ重要だと思う。


 ところでリフレ的な主張を、詐欺まがいのレトリックで「構造改革」として喧伝したのは、過去の小泉政権もそうだったが、(現実の政策状況がどうみてもリフレ 笑 なので従来の清算主義、構造改革主義などの立場ではもはや言いつくろえないほど)追い込まれた人たちのやる常套手段であり、最初からまともな論理じゃない。


 詳しくは、ある雑誌から原田さんたちの書評を依頼されているので、その草稿などの形でこのブログに掲載しますが。しかし問題なのは、僕は原田さんたちの本の書誌情報を知りたくて、ググるともうその誤解だらけのブログがヒットすること。つまり嫌でも間違いが目につく 苦笑。


 ところでもうひとつググったらでてきたのでつい見てしまったが 笑、『Animal Spirits』の内容紹介もまったく違う! むしろシラーやアカロフが批判していることを、その内容紹介では、彼らの主張として紹介している!!


 正直、お手上げである。

 
 できればぐぐるとでてこないようにしてもらいたい。ついつい本気にみせかけた冗談だと思って読んでしまうから 笑。


 ところで原田さんたちの本は、とても参考になるすぐれた危機の検証本である。必読であるのはいうまでもない。ちゃんとした書評も上で少し書いたがそのうちここにきちんとしたものを再録する予定である。