草稿段階から拝読させていただきましたが、岩田先生の『金融危機の経済学』、竹森俊平さんの『資本主義は嫌いですか?』、そしてアカロフ&シラーの『Animal Spirit』と並んで、いまのところ最も参考になる今般の世界経済危機関連の本といえます。書評を某誌に書く予定ですが、とりあえず簡単に内容を紹介します。
よく世間に流布している「通説」−−世界経済同時危機の背景には、新興国や日本とかの過剰貯蓄を、米国が吸収したというグローバル・インバランスが、資金の流れの歪みを生み出した、という見解に対して、原田さんらは批判的です。要するにグローバル・インバランスは、世界経済同時危機の原因ではない、という立場ですね。
原田さんたちの本では、危機の原因は、主に1)過大な金融緩和と急激な引締め、2)格付けのインセンティブが歪んでいたこと(=サブプライムローン証券のリスク管理の甘さ)、3)さらに規制が不適切だったこと(SIVの問題、自己資本比率規制の問題など)に求められています。
その上で本書では、日本、新興国、アメリカ、ヨーロッパ諸国の世界経済同時危機前後の状況が、具体的なデータとともに詳細に検討されています。おそらく本書は今回の危機に関するかっこうのデーターベースの代わりになることでしょう。
原田さんは今回の不況は、アメリカの景気次第であり、日本では円高回避のために緩和政策が重要である、としています。そして長期的な効率性をめざすことも重要であると。
僕は、原田さんの主張も理解できますが、グレゴリー・マンキュー、ケネス・ロゴフやジョセフ・スティグリッツ先生ではないですが、「緩和的な政策でできることはなんでもする」ということと、そして「物価安定レジーム=ゼロ近傍の低いインフレ安定を短期で目指す」を放棄して、短期的にはやや高めのインフレ率をも許容するリフレーションが必要であると思っています。そうすれば円高回避を政策目標にすることもなく、またアメリカの景気の好悪からなるべく(まったく回避することは不可能ですが)遮断することが可能になるのではないか、と思っています。
- 作者: 原田泰,大和総研,DIR=
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/02/25
- メディア: 単行本
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