竹森俊平「サブプライム危機の原因と対策は何か」

 今日発売の『週刊東洋経済』から。読むべきなのは竹森さんとアイケングリーンの論説だけかな。竹森さんの主張は、サブプライム危機の原因を、1)アメリカの過剰消費(所得<消費)がFRBの金融政策でさらに膨張し崩壊したという説。これは長期的に維持可能な消費への回帰をするので金融財政政策は効果薄い(あるいはまたバブルおこすだけ)、2)金融規制の失敗が原因で、過剰なレバレッジが問題の根本なので、金融財政政策で停滞は回避可能、というふたつの見解がある。

 竹森さんは長期的には現在よりもアメリカの消費が低下するのは不可避とみる。そもそも過剰消費になったのは、アメリカの経常収支赤字をファイナンスする資本輸出国の存在がある。これがグローバルインバランスの存在。例えばアジア経済危機以降のアジアの新興国は貯蓄>投資という資本輸出に拍車。

 今回の危機で、このグローバルインバランスの修正が余儀なくされている。つまりアジア経済の内需転換が求められる(なぜならアジア諸国の投資<貯蓄は不況圧力であり、その解消をいままでアメリカの過剰消費が担っていたがこれからはそれが修正されるから)。

 では、アジア経済の内需転換のキーは何か? 竹森さんはそれはアジア各国の金融市場の発展であると説く。新しい投資先の開拓のためにアジアの金融市場が今後、世界経済の発展のキーとなるのである。それに失敗すれば世界経済の停滞は長期化するだろう、というのが竹森さんの読みであろう。同誌にあるバリー・アイケングリーンもその温度差の高低はあるものの基本的に竹森さんと同じ見解である。

 いずれアカロフらの新刊がでた時点で、竹森、シラー、岩田、原田さんたちの諸説を比較検討してみたいなと思っています。

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