ドクトル・ピノコじゃなくて、仁科桜子『病院はもうご臨終です』

 編集の上林さんから頂く。どうもありがとうございます。

 本書で一番興味深いところは後半の医者の人生双六と、医局独裁体制崩壊を扱ったところである。数ヶ月前に医者の皆さんと議論する貴重な経験があり、そのときに「白い巨塔」の世界が急速に崩壊している事実と、それが地方での医者不足などの雇用のミスマッチを招いていることを知って興味をもっていた。本書はそれをわかりやすい文章で説明してくれて一気に読める。そして国公立病院の悲劇(低賃金重労働)の中核には、インサイダー(たとえば組合)の既得権が大きく作用していることもわかる。僕がそのときの複数のお医者さんたちと議論したことが本書と見事に照合していることを考えると、本書は医者の側の事情を(軽快な文章とは反対に)相当に深く書いていると思われる。

病院はもうご臨終です (ソフトバンク新書)

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