早読み!『週刊東洋経済』2008年ベスト

 自宅に届いたのでいち早く読む。経済・経営書ベストの発表。上半期はベスト10に入った『不謹慎な経済学』は年間では23位にいました。ありがとうございます。名指しで互いに批判しているクー氏の本と同ランクなのも面白いところです。

 ベストの詳細は、もちろん本誌を読まれたほうがいいですが、やはり上半期に上位に来たものは年間では順位を下げますね。僕はうっかり年間なのを忘れてあわてて出したら下半期に出たものが中心になってセレクトしてしまいました。またアンケートの締め切りが今年はかなり早く原田さんたちの本とかいくつもアンケート終了後に読んで感銘した本もありました。ところで一位はたぶんそうなると思ったのですが、竹森さんの『資本主義は嫌いですか?』でした。同誌にある竹森さんのインタビューは必読でしょうね。

一部だけ引用しておきますが、下の引用にある認識には賛成します。

資本主義経済が高い成長を目指し、先進国が社会保障プログラムを維持しようとすれば、必ずしもバブルになるかどうかわかりませんが、高い利潤率をもたらす投資機会が必要です。もう一つの選択は、中国、東アジア、あるいは日本が国内に健全な投資対象を創って、資金を投下することです。これにより、需要が生まれて、余剰資金もなくなります。略 また、冒頭に述べたように公正で透明性の高い金融市場を整備することが資金を呼ぶために不可欠です。

また日本についての認識も同じですね。このブログでも当初から僕がぶつぶついっている、いわばアメリカは早期に景気回復するが、日本の方がより深い不況になる可能性がある、というものです*1

米国はいざとなれば経済刺激策を中途半端で終わらせず、徹底してやります。日本はそうではないので、日本の不況がいちばん長く続く可能性があります

さてほかの順位は同誌をみていただくとして、僕のだけ完全コメントを添えて下に書きます。これは年間というよりも上半期であげたもの以外、として読んでいただいたほうがいいでしょう。

【第1位】
『テロの経済学』/東洋経済新報社

コメント 本書では、テロリストたちの教育水準が非常に高く、また出身階層も裕福であることを示している。テロリストたちは貧しさと教育が不足しているからテロに走ったのではない、実に様々な誘因(組織への使命感、政治的・宗教的信条など)によって行為に及んだのである。きわめて今日的な話題であるテロを考える上できわめて重要な貢献である。

テロの経済学

テロの経済学

【第2位】
『景気ってなんだろう』/筑摩書房

コメント わかりやすい解説と鋭利な分析は、最近出版された経済ものの新書の中では出色の成果である。例えば国際金融危機での金融政策の重要性を、本書は景気問題のキーとして読者に、静かにだが力強く提起している。

景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書)

景気ってなんだろう (ちくまプリマー新書)

【第3位】
『格差と希望』/筑摩書房

コメント
格差問題の日本でとりあげられているほぼ主要論点をカバーした便利さと分析の明るさで重宝。政策や価値判断で異なる立場のものが読んでも得るものがある貴重な論争の書でもある。

格差と希望―誰が損をしているか?

格差と希望―誰が損をしているか?

*1:竹森さんは欧州も米国より深刻になるとしていますが、これも僕の周囲のまともな経済学者=アメリカグローバリズムの終焉で覇権交替などと安易にいわない人たち と同じ認識ですね