原田泰「金融機関の破綻は負の乗数効果を持つのか」

 もともと僕が「大恐慌にはならずよくある不況が世界を覆いわりと米国は早期に回復するが、そのときでも勝手に国内要因で不況になってる日本の一段の悪化が一番心配」論を持つようになったのは原田さんの意見を直接聞いてから。その一端が以下の論説にあり。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/harada.cfm

「金融機関の破綻が乗数的に経済全体を悪化させるという説が強いが、日本の失われた10年の経験からすると、そのような主張の根拠は乏しいようだ。もちろん、個別金融機関の破綻の経済全体への影響が大きくないとしても、金融システムを守ることが大前提なのは言うまでもない。金融緩和や流動性の供給、預金と決済性口座の保護などの対応は必要だ。疑心暗鬼で預金が流出したり、銀行を通じた支払いができなくなっては困るだろう。日本の拓銀の破綻への対応では、この点に関しては問題がなかった。だからこそ、拓銀破綻が大きな悪影響を与えなかったのだろうとも言える」

 このブログでもすでに何回か書いたように本当の危機(real crisis)というかDiamond-Dybig型の金融危機は回避されたと思います。これが上の引用でいうところの「金融システムを守ること」であり、その「大前提」はいまのところ欧州の多くの国と米国はともに満たされたと僕は思っています。それゆえ、確かに不況が訪れることはいくつかの指標(まだ全部揃ってはいない)からいえることですが、しかしその期間はかなり短い(長くて一年程度か?)と予測できます。日本の長期停滞の失敗が日本銀行の政策のミス(しかも一度だけではなく継続して実質金利の高止まりを放置していたのが決定的)であるのと、FRBの対応はまさに真逆だと僕は判断してますね。