後藤和智『「若者論」を疑え!』、下田博次『学校裏サイト』、渋井哲也『学校裏サイト』


 東洋経済新報社学校裏サイトの本を出しているので興味を魅かれて購入。ついでに晋遊舎新書の同題名の本も。ちょっと積んどいた後藤和智氏の本も一緒に読む。


 『「ニート」って言うな!』への批判も評価も拙著(『不謹慎な経済学』第6章)で書いたので再説はしないが、このニート本の著者三人の中で最もすっきりした書き方が印象的だったのが後藤氏。今回も文章的には若い頃の僕に似ていて(とか書くと迷惑だろうけれども 笑)、引用癖が強いわりにすっきり読めるのが特徴。最初の対談の相手である本田由紀さんが相変わらずの構造変化による若者論を展開している。不思議なことに、後藤氏のこの本の主張はまさに若者構造変化論への批判なのだが、この捩れ具合は非常に興味がある。後藤氏が気が付いていないのか、あるいは本田氏譲りの華麗にスルーなのかはわからない。対談の最後で、本田氏が権力や資本の代弁である「人間力」掛け声などに抗して、後藤氏に若者たちに「こうしよう!」と呼びかけるべきだ、というとき、両者の掛け声の差異はかぎりなく不分明である(=若者改造計画1,2ぐらいの違いしかないだろう)。僕は、かけ声派からみれば物足りない、後藤氏の淡々と批判に徹する態度が好きなのだが。なので後藤氏には本田氏らの期待を裏切る孤独の旅路をすすめたい。

「若者論」を疑え! (宝島社新書 265)

「若者論」を疑え! (宝島社新書 265)


 経済問題的には「ニート」論のあやしさを突いたところ、そして経済格差ではなく貧困問題や社会的排除を重視する姿勢を明確に打ち出しているところは、予想されたがそれなりに理解はできる。もっとも飯田氏の本に2行ほどふれた以外は、経済格差や貧困問題と景気(及び中期的経済成長の安定)との関係にはまったく触れず、「ニート」論のあやしさを本田氏らと同時並行的に指摘してきた山形浩生、若田部昌澄、不肖田中らには言及なし、という態度こそ少数意見の排除でしょ(前作はあったのに残念)。


 ところで後藤氏の本には携帯の悪影響を誇張する言説への批判はあるが、学校裏サイトやプロフなどの弊害についての実証的な話題や論点はない。その意味では学校裏サイト関連のこの本の評価を知りたいところだが。


学校裏サイト

学校裏サイト


 下田氏の本は小中高校生の携帯文化の現状、特に学校裏サイトの現状と管理者の生の声などを掲載していて、規制側の意見を代表するものとして非常に見通しのいい素材を提供しているといえる。プロフもネットのニュースでたまにみかける話題だがこの本でまとめておじさん的に理解できたのが有難い。また渋井氏の本はその下田氏への長文のインタビューを含む、主に学校裏サイトにかかわるいじめ問題に焦点をあてたもの。装丁に反して?かなり硬質の文体でたんたんと記述を積み重ねている。個人的には下田氏の本をメインに読めば、渋井氏の本はサブの位置で参考にすればいいと思う。

学校裏サイト――進化するネットいじめ(晋遊舎ブラック新書 6)

学校裏サイト――進化するネットいじめ(晋遊舎ブラック新書 6)