春山昇華『サブプライム問題とは何か』


 著者のプロフィールによると90年代後半からネットで活動している著名な方なようですね。僕は今回はじめてその方のブログを拝見しましたが。第4章の後半、第5章のほとんどを僕は賛成しかねています。例えば岩井克人先生もドルの基軸通貨の終焉みたいな議論と、今回のサブプライム危機を結び付けますが、本書では「アメリカ帝国の終焉」という表現が採用されています。またアメリカの貿易赤字がアメリカの「戦略」なそうですが、この前提からして僕は頭を捻ります。むしろこのエントリーで紹介したウィリアム・プールが書いたように各国の人口構造の変化が起因する投資・貯蓄構造の変化からグローバル貯蓄過剰の緩やかな終焉を予測するほうを僕は支持したいのですが。


サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254)

サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254)

 
 ただ前半は、サブプライムローン問題の丁寧な解説になっていまして、現段階で類書がないだけに役立つことができるでしょう。そして本書は若干著作の戦略上からか「略奪的貸付」や市場の失敗の側面を過剰に書いているようにおもえますので、例えばこのエントリーなどを参考にされるのがいいでしょう。あと読んでないけれども噂で聞いた高橋洋一論説なども参考になりそうです。


 なお基軸通貨の終焉論ではなくて、マンキューやクルーグマンはじめとする対外通貨に対するドル安の趨勢についての議論は、これとかこれを参照されるといいと思います。