仲正昌樹『松本清張の現実と虚構』


 途中まで読んでいて積読になったのを衝動的に読破。これは仲正氏の日本の構造問題論ー古代から現代までーといった趣きの松本清張論でもある。氏の著作ではかのネット反論術本が傑作だったがそれに優るとも劣らない力作。あまり評判は聞かないのが不思議ともいえる。古代から明治以降現在までの天皇制を中心にした権力の構造分析は一読の価値はやはりあるだろう。


 清張の『落差』読解での公定教科書の採用とその利権をめぐる高度成長期と現代の照応はきわめて示唆に満ちている。マクロ経済分析や貨幣論については仲正氏の主張はまったく関心がないのだが、最近著の『集中講義 日本の現代思想』は読んでみたいと思っている。