声のでるゴキブリから「プアー・オールド」の“敵”へw(山崎元論説)


 のびたさん経由、ご教示ありがとうございます。

 山崎元さんのインフレターゲットの評価。http://www.ohmynews.co.jp/OhmyColumn.aspx?news_id=000000002077


 1 インフレターゲットが国際的標準であるという認識の開陳(声のでるゴキブリが世界中に繁殖していることを認定w)。


 2 名目成長率政策(インタゲ政策)には微妙な日本人的ニュアンスをかませw、金融政策についても不明確な理由?で「現状維持」を主張。

   「当面は、ゼロ金利解除から日が浅いことや、消費者物価上昇率が大きく高まっていないこともあり、政府・日銀共に金融政策に関しては「現状維持」でいいのでしょうが、」

 「現状維持」ですと山崎さんも嫌がると推測する日銀の昔風のケインジアン真っ青の裁量政策(リーク付きw)全開ですが、それでもよろしいんでしょうか?


 3 インフレ政策は景気対策にはなっても、「プアー・オールド」の“敵”w

   「インフレ喚起的な政策が採られるとすると、国民への影響は、当座は、景気と雇用に関してはプラスの効果が出る可能性が大きいと言えます。ただし、実際にインフレ的な環境になった場合には、小泉内閣時の年金改革を反映して、年金受給額がインフレに十分スライドしない形で実質的に削減されるので、年金で暮らす、お金持ちでない高齢者(「プアー・オールド」とでも呼びましょうか)のような家計には、かなり厳しい状況になる可能性があります。」


 年金の制度についてはちょっと私も最近勉強をさぼってましたが、厚生労働省のホームページをみていただきたいのですが、

http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/03/dl/tp0315-2c.pdf

http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/03/dl/tp0315-2d.pdf

http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/03/dl/tp0315-2f.pdf


などをみますと、リフレ政策でリフレ過程だとかなり高めの物価上昇率を容認していますが(山崎さんの表現だと「当座」の景気回復期のこと)、山崎さんの問題にしていますリフレ過程終了後のインフレ目標1〜3%ぐらいの緩やかなインフレ期が問題になっているのだと思います。


 現状のスライド方式ですと、スライド特例期間(2028年度まで)とそれ以降の賃金上昇率でスライドする期間にわかれていますが、山崎さんの記述だと前者のスライド特例期間の話ではないかと推察します。これは上記の二番目のリンク先をみてみますと、インフレ目標が実施されたときの想定される下限(1%ぐらいでしょうか)では政府推計を真にうけておくと賃金上昇率は2.1%(実質賃金率だと1.1%)だということです。スライド特例期間はここから公的年金被保険者数減少率と平均余命の延びを勘案した一定率(0.3%)というスライド調整率をひくものです。これは2025年度まで小塩隆士さんの『人口減少時代の社会保障改革』(日本経済新聞社)によるとだいたい0.9%だそうです。以下、小塩本を参考に計算しますが、


 上記の数字をもとに
  新規裁定者 は一人当たり賃金伸び率(2.1%)マイナス0.9%=1.2% →実質化すると1%をひくので0.2%
  既裁定者  は物価上昇率(1%)マイナス0.9% ですのでこれは0.1%

 になります。新規裁定者(これから年金をうける人)はインフレ率が(多くのインフレ目標が中央値として設定している)2%になると賃金の伸び率は2.8%ぐらいと推計されてるようですから実質化するとマイナス0.1%の負担増になります。既裁定者(すでに年金をうけてる人)は逆に1.1%のプラスになります。この新規裁定者の2%時のマイナス0.1%が山崎さんのいう「かなり厳しい状況になる可能性」となるのかどうかは以下の事態もお読みになった上であとは皆さんの判断におまかせします(無責任なようですが、最終的にはこの種の再配分の評価は僕も含めた国民の価値判断に依拠します。僕はしたにも書きましたがこのささいなロスを回避することのデメリットの方があまりに大きいのでこのロスは事実上ロスにならないと思います)。

 では、ゼロインフレやデフレだと今度はどうなるでしょうか? 


 ちなみにいまのままで金融政策などが現状維持でいいということになると、財政の持続可能性も黄色信号ですし、当然年金財政も黄色信号です。 で、リフレ政策ならぬこーぞ改革(給付の削減やリフレないぶんかなり大目の消費税増税など)で対応して、“不十分”ならざる“十分”な改革をやると、「プアー・オールド」へのより一層の敵化と、むしろ引退世代そのものの“敵”になるかもしれませんね。山崎さんがその覚悟を示したとはちょっと読めませんがどうでしょうか。そしてこの意味でのインタゲ政策採用への反論は、例のゼロ金利政策だと利息がつかなくて引退世代を苦境にたたせるからデフレやゼロインフレでも利上げしろ、というのに似ています。


 年金制度の細目はよく理解していないのですが、もし現状の制度で、実質額が上記のように減少するケースでは、実質額が一定になるような工夫を山崎さんが提案したいというならばそれはそれでひとつの定見かもしれません。