門倉貴史『統計数字を疑う』


 とてもおススメ。前半はコネタを中心に統計データの「くせ」や個々の「見方」を紹介して楽しませ、後半はまとまったテーマ(各シンクタンクの経済効果、CPI上方バイアス、地下経済に関するデータの検証)にかなり高度に突っ込んでガチンコ勝負という構成。


 日本の営利系シンクタンクに対する「××の経済効果」みたいなレポートを多くだして、政策提言をだしていないようなところは疑ってかかれ、という批判はまっとうなものであり、私もすぐにいくつかのシンクタンクが脳裏に浮かんだw。


 また門倉さんの推計に基づけば、エネルギー関連を考慮すれば、日銀はデフレか一万歩ぐらい譲っても(譲る必要は全然ないけどw)きわめてゼロ近傍で量的緩和・ゼロ金利解除に踏み出したということで、その決定が運任せの「ゼロ金利解除ありき」のものだったのではないか、と疑わせるのに十分である。


 門倉ブログ参照:http://ameblo.jp/kadokura4/entry-10015801936.html


 なお門倉さんの上記エントリー以後のことであるが、CPIの修正幅が極端に大きく、それがCPIショックを与えたことは記憶に新しい。もちろん上記エントリー後の話題も本書では十分フォローされており、より記述は精彩を放つものになっている。また今回の改訂の問題点もさまざまありそのいくつか門倉さんの本では言及されているので参照されるべきであろう。


 本書は他にもこねたで、受刑者増と日本の福祉制度の欠陥を結び付けるところ、サービス残業問題、など興味深い指摘が多く一気に読めるだろう。