『ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学』


ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学

ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学


 ご存知のブログの2004年から2005年までのものを収録。コンスタントにチェックしている私にも懐かしい話題が多く、日本語でまとめて読むと違う印象を受けるものも多い。特に注目すべきなのは、移民政策、雇用制度、そしてセーフティネットの関連を欧米で比較した分析。

欧州モデルー移民の同化に失敗。理由はセーフティネットが寛大+雇用制度が閉鎖的。前者で移民先の社会慣習や生活態度に順応しなくても生活できる、後者で余暇をたっぷりとれるが怠け者の労働者も解雇を困難し、社会移動を制限してしまう(高い失業や地下経済の発展)。
米国モデルー移民の同化に成功。理由はセーフティネットが寛大ではない+労働の流動化の度合いが高い。前者で「経済階層を上方へと移動するのに役立つ価値観ーそれには移民先の国の社会慣習や生活態度に順応しようとする意欲を含むーをもつ移民をひきつける」、後者で「米国は新規雇用を妨げたり労働移動(地理的な移動であれ職業観の移動であれ)を制限したりする雇用法をもたないので、移民は、昔からの住民と実質的に同じ条件で職を求める競争に参加できる。欧州経済と異なって米国経済は高度に競争的であるために、雇用主には、労働者が外国人であるとか英語を十分に話せないとかの理由で、有能な生産性の高い労働者を差別し活用しないでいるような余裕はない。第二世代までに大抵の移民家族は、宗教上の信条や民族的な素性はなんであれ、完全に同化するのである」。

この社会モデルの違いは保育サービスや人口減少への取り組みにも差異をもたらす。欧州・日本モデルは移民政策が成功していないか、移民政策を事実上採用していないか、これらの国では、ある程度の社会的補助(2人目、三人目への政府からの移転所得)が、移民への需要を緩和するので役立つのかもしれないと指摘。しかし出生率の改善にはベッカーもポズナーも懐疑的で限定的な効果しか認めていない。反対に米国では移民政策が成功しているので、子どもを増やすコストを増加させる根拠はない、という。

本書の後半はベッカーのコラムの収録。ただし前半のブログほど面白くはない。