高橋洋一『日本はこれからどうするべきか?』(かや書房)

新型コロナ危機の前後では、世界の経済と政治情勢は激変している。これからも大きな変容は続くだろう。その時に経済・政治・安全保障を多角的に、自分の頭で考えていくことが必要だ。マスコミの世論誘導、政治の誘導、それらに煽られないで客観的なデータを単純明快な論理的推論で、さまざまな事象を見ていかないといけない。ただしこれらをひとりでやることは不可能だろう。その時の先導役のひとりとして、高橋洋一氏の貢献はやはり日本ではきわめて有益だ。本書はその高橋洋一氏の最新啓蒙書として断トツにお勧めできる。

 

まず導入をわかりやすいマンガで解説しているのがいい(多少、高橋さんと思われるマンガキャラが美化されてる点は突っ込みなしだw)。マンガ部分だけでもかなりわかりやすく、現在の国内・国際的な話題が網羅されている。

 

また個人的に超便利なのは、新型コロナウィルスの感染とそれをめぐる国内外の対応たこと細かに書かれているカレンダーだ。これはこれからこの問題を語る上では必修のアイテムで、切り取るなり、コピーするなりして手元に持っておきたい。高橋氏の本にはそのような資料性の高い情報が実に多い。各種の図表も利用価値が高い。ここらへんは編集と著者のコラボがうまく機能しているからだろう。

 

個別の話題も高橋節が健在で、さくさく読める。新型コロナの対応をめぐる中国政府の構造的な問題、韓国との交渉問題、北朝鮮事情をどうとらえるのか、そしてロシア、イラン、欧州の情勢、そしてもちろん米国など諸外国の経済・政治事情が実にわかりやすくまとめられている。しかもポイントは単に問題だけを提示しているのではない。経済政策、安全保障、感染症対策とそれぞれで自身のモデル(マンデルの三角形、平和の5要件、ロジスティク飽和モデルでの感染推測と対策、そして日本の100兆円基金対策などなど)もまた具体的で、自分の思考を整理するのに役立つ。

 

また少子化、年金危機などの日本の未来経済の問題も十分に扱っている。これだけの話題を網羅して、わかりやすく書ける才能には毎回驚かさせられるが、コアな高橋洋一ファンなら知っているはずだ。高橋氏の提言や解説する力は、10年前に比べても各段に進展していることを。隠れた努力の人であることがコアファンならわかっているだろう。

 

コアなファンも新しい読者もともに本書は得すること間違いなしである。