齊藤元章&井上智洋『人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点』 (PHP新書)

 井上さんから頂戴しました。ありがとうございます。

 本書はいま補助金不正受給問題で逮捕されている齊藤元章氏との対談ということで別の意味で話題になりそうでしたが、幸運なのかなんだかわかりませんが、ひとまずそういう事件とは無縁のところで読むことができる書籍です。

 ビジネスパーソンが、これからの世界の社会・経済をざっくりと新しい視点(人工知能世界の進展)から見渡すことができるいい本ではないでしょうか?

 齋藤氏は僕はこの本で初めて存在を知った程度でよくは知らないのですが、かなり押しの強い人だな、と思う反面、ちょっともう少し勉強もされたほうがいいかな、とも思いました。例えばご自身の独想的なものだと本書で指摘している「日本が失われた20年にもし5%成長したら名目GDPがどのくらいになったか」という話ですが、これはリフレ政策の基本的な認識のひとつで、20数年間にデフレで失われた名目価値の回復こそが本来のリフレの意味なのです。なので齋藤氏の独想ではなく、わりと昔から指摘されてきたことです。しかも個々具体的なテーマにも活用されてます。

 例えば日本の防衛費の拡充についてこの「もし名目成長率が××だったら現時点どのくらいなのか」という観点から正当化をはかる論陣などです。

 さらに古くはバーナンキが『日本の金融危機』に収録された論文で展開してもいます。というか対談相手の井上さんも確かそのような発想のひとりなのでw、ぜひ対談中に突っ込むべきでした 笑。

 とはいえ、なかなかふたりの世界観の対決は読んでいて面白く、また井上さんの経済論のまとめにもなっているので、その意味でも楽しめます。