『アステイオン』が送られてきたときに、「このような高踏的な雑誌に誰が書いた?」と思ったら、若田部さんでした。それはさておきとても有益な論説です。まさに「ポスト真実」時代を経済学的視点から俯瞰していて勉強になります。米国での知識人と論壇の変化ー物事を批判的にみる知識人から特定の思想を伝える伝道師としてのそれーを、現在、米国で話題の書籍を通じて、米国での「話の通じない」議論の背景にある陰謀史観などの問題点を指摘していきます。
陰謀史観の影響は米国だけではなく日本でも論壇の分断に寄与しているところです。経済学をネオリベとレッテルを貼るへんな人たちにはしばしば遭遇します(政府介入を積極的に支持するリフレ派にもネオリベとする奇妙な人にはネットは事欠きません)。さらに左右問わずに、安倍陰謀説、朝鮮陰謀説などの陰謀論にも事欠きません。その意味では、本論説で紹介されている米国の事情は日本にも当然にあてはまる問題であり、今後も深刻化するでしょうね。

- 作者: 公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2017/11/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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若田部さんたちが行ったブキャナンへのインタビューは以下
Adam Smith, James Buchanan, and Classical Liberalism
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshet2005/48/1/48_1_124/_article
本書で中心的に議論されている書籍は以下

Democracy in Chains: the deep history of the radical right's stealth plan for America
- 作者: Nancy MacLean
- 出版社/メーカー: Scribe
- 発売日: 2017/07/27
- メディア: Kindle版
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関連する邦語文献は以下

- 作者: ジェインメイヤー,Jane Mayer,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2017/01/27
- メディア: 単行本
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ブキャナンの代表作は以下

赤字の民主主義 ケインズが遺したもの (日経BPクラシックス)
- 作者: ジェームズ・M・ブキャナン,リチャード・ワグナー,大野一
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: 単行本
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